米国の豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○肥育豚価格が暴落、71年以来の記録的低水準に


10月後半から肥育豚価格がさらに急落

 米農務省(USDA)によると、 9 月の肥育豚価格(主要 5 市場の平均生産者販
売価格)は、前月から4.4ドル安、前年同月比38.4%安の30.2ドル/100ポンドに
なった。肥育豚価格は、97年7月以降、前年を下回る軟化基調が続いており、98
年1月からほぼ30ドル台で推移している。しかし、10月に入ると肥育豚価格はさ
らに低下し、10月の最終週には、22.4ドル/100ポンドにまで急落した。これは、
前年の同時期に比べ2分の1以下に相当し、かつ、71年以来の低い水準である。 
ロシア向け食糧援助の実施が、11月6日にUSDAから発表され、その対象品目に豚
肉が含まれていたが、肥育豚価格は依然低迷を続けている。

◇図:肥育豚価格◇


価格低迷の中で、と畜頭数は引き続き増加

 コマーシャルベースのと畜頭数(生産者の自家消費分を除く)は、97年9月以
降前年を上回って推移しており、生産増による供給過剰傾向が、長引く肥育豚価
格低迷の要因となっていた。9月のと畜頭数は前年同月比7.2%増の860万頭とな
り、やや伸びが鈍化した。しかし、10月に入り1週当たりのと畜頭数は前年の同
じ時期に比べ8〜10%増に回復したことに加え、例年と同様に季節的要因から前
月と比較して生産が増加したと見られる。今回の価格暴落は、供給過剰傾向にあ
る中でさらに供給量が増したことが要因であると言える。

◇図:豚と畜頭数◇


寡占化が進んだ生産構造が生産縮小を阻む要因

 農業関係雑誌の特集記事によると、供給過剰で肥育豚価格の低迷が続く中で、
生産が縮小傾向に転じない要因の一つとして、一部の大規模生産者による寡占化
が急激に進んだ現在の肉豚生産構造が挙げられている。生産規模の大きい上位50
の生産者が出荷頭数の 2 分の 1 を占める状況になっており、これらの大規模生
産者は、生産効率向上のために施設稼働率を上げているだけでなく、さらなる生
産コスト削減のために規模拡大を続けているとしている。肥育豚価格が低迷して
いる98年においても、上位10社のうち9社が繁殖豚の飼養規模を拡大していると
見られる。

 USDAが9月に発表した肉豚の飼養動向によると、依然生産拡大傾向が見られる
ものの、中小規模の生産者が多いアイオワ州では、上位5州の中で唯一繁殖雌豚
頭数が減少している。厳しい経営環境の中で、大規模生産者と比較して生産コス
トが高く、経営基盤の弱い中小規模生産者の肉豚生産からの離脱または生産縮小
の増加が原因の一つと考えられる。

◇図:年間販売頭数規模別の販売頭数シェア◇


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