農民団体がCAP改革案の修正を要求(EU)


CAP改革の必要性は認める

 EU最大の農民団体COPA-COGECAは9 月、EU委員会が今年 3 月に提出した共通農
業政策(CAP)改革案の修正を求める提案を発表した。

 この提案では、まず、EUの農業が直面する歴史的課題として、中・東欧諸国の
EUへの統合、自由貿易地域やWTO(世界貿易機関)の枠組みによる貿易の自由化の
推進、食品の品質と安全性、環境保護、農村地域と雇用、ならびに世界の食料需
給バランスに対する貢献への対応を掲げ、CAP改革が必要であるとしている。

 また、この基本として、農相理事会が提唱している「ヨーロッパモデルの農業」
について、ヨーロッパの農業の核である家族経営が、適正な農産物価格や農業の
持つ多面的な役割に対する公的な補助を通じて妥当な所得が補償されることを前
提に、@安全な食料の安定供給、A農村地域や環境の保全、B地域間の貧富格差
の解消という3つの機能を総合的に発展させることにより達成されるべきである
としている。


EU委員会のCAP改革案に多くの修正を求める

 しかし、EU委員会の提出したCAP改革案は、これらの課題に的確に対応しておら
ず、また、改革案の前提となった国際市場の見通しがアジアやロシアの経済危機
により一変したとし、その修正を求めている。

 まず、前述の課題に対処するため、次の政策目標が掲げられている。

1 潜在力のある生産者に、市場の域内外を問わず質量ともに拡大できる見通し
 を付与すること

2 生産者の競争力強化や、経営・活動の多角化を支援すること

3 生産者が前述の農業における3つの機能に対する社会の期待に応えることが
 できるように財源の投入先を価格市場政策から他の分野に徐々に転換すること

 次いで、価格市場政策、農業構造政策、農村政策など分野別に具体的な批判、
修正案が掲げられている。価格市場政策に関する主なものは次の通りである。  

1 EU委員会の改革案では生産者の公的補助への依存度が高まり、市場との関連
 性が後退する。

2 加盟国の裁量に任せる財源を作ることやクロス・コンプライアンス(直接所
 得補償の交付に当たって、環境関連の条件を付与すること)は、統一市場の下
 での生産者間の競争を歪曲し、共通性を損なうことから反対する。ただし、生
 産者間、部門間、地域間でのバランスを取るための柔軟性は必要である。

3 EU加盟国と中・東欧の加盟予定国とで、生産者を区別することは不可能であ
 ることから、所得補償に係る財政支出が増加する。

4 次期 WTO交渉開始前に交渉に関連する決定を行うべきではない。交渉いかん
 では、さらなる譲歩を迫られることとなる。

5 CAP改革で生じる生産者の所得の減少は、全額補償されるべきである。

6 酪農分野では、現行の供給管理政策を維持するとともに、生乳生産割当(ク
 オータ)制度に柔軟性を持たせる。また、今後の米国・カナダ間におけるパネ
 ルの裁定結果を踏まえて、生乳の二重価格制や二重クオータ制を検討するべき
 である。

7 牛肉分野では、供給管理政策を維持し、市場が危機的状況に陥った際は介入
 買い上げ制度の発動を可能にする。生産者間や地域間での公平を保つため、直
 接所得補償制度は一律にすべきであり、加盟国の裁量による支払いは受け入れ
 られない。


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