中・東欧諸国農業の現状と需給見込みを報告(EU)


現在加盟交渉中の 5 カ国が2003年に加盟することを前提

 EU委員会は10月、現在EU加盟交渉を行っているポーランド、ハンガリー、チェ
コ、スロベニアおよびエストニアの5カ国と、今後加盟を希望しているブルガリ
ア、ラトビア、リトアニア、ルーマニアおよびスロバキアを含めた中・東欧10カ
国を対象として、各国の農業の現状および2003年までの主要農産物の需給見込み
に関する報告を公表した。この報告は、現在EU加盟申請中の中・東欧 5カ国がEU
に加盟し、2003年以降EU単一市場と共通農業政策に組み込まれることを前提とし
て作成されている。


現状では、畜産の生産は依然低水準

 現状報告によると、近年の中・東欧諸国における農業は、89/90年(7月〜6
月)以降、ほとんどの国々で民営化などの構造改革の影響により生産量が大幅に
減少し、深刻な危機を経験した。現在は、耕種作物部門で生産が回復局面に転じ
たものの、畜産部門では依然低水準の状態にある。89年と97年の家畜の飼養頭数
を比較すると、肉用牛および羊・山羊で特に頭数の減少が著しく約半分に減少し
た。豚および鶏では、頭数が30〜35%減少したが、最近回復傾向が見られる。

中・東欧諸国の家畜飼養頭数


 また、農業労働力について見ると、中・東欧10カ国で約 1 千万人(EUは750万
人)おり、農業の占める相対的な重要度は大きい。しかしながら、1人当たりの
農業生産額はEU平均の11%と生産性が著しく低く、農村地域における余剰労働力
が大きな課題であるとされている。

 一方、食品産業分野ではと畜場や乳業工場などが、民営化されたものの、設備
の老朽化などによる生産基盤の再構築の問題に直面しているほか、EUの動植物検
疫や衛生基準に適合した設備の必要性に迫られている。


今後の畜産物生産・消費は回復も、生乳、鶏肉の余剰減

 畜産物の今後の需給見込みは、生乳では、飼養頭数の減少率が鈍化する一方、
1頭当たりの泌乳量が増加するため生産量が増加する。ただし、1人当たりの消
費量が増加するため、今後生乳の余剰量は減少する。

 牛肉は、乳肉兼用種から肉専用種への転換が図られ、飼養頭数の増加およびと
畜重量の伸びにより生産量は拡大するが、消費量も増加するため自給率は均衡ま
たはわずかに低下する。

 豚肉は、消費量の増加を上回る生産量の増加が見込まれ、ポーランド、ハンガ
リーおよびブルガリアで今後ロシアなどへの輸出機会が増加する。鶏肉は、消費
量が増加する一方で生産量の伸びが鈍化するため、全体の輸出余力は低下する。    

 なお、今後の需給見込みは次の通りである。

中・東欧諸国の畜産物の需給見込み

 注:牛肉、豚肉は枝肉ベース、鶏肉は中ぬきと体ベース


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