飲用乳生産枠の取引価格が大幅低下(豪州)


NSW、生産枠取引価格の下落傾向が続く

 豪州ニューサウスウェールズ(NSW)州では、2003年まで飲用乳の生産者販売価
格支持制度を継続することが決定されているが、最近、生乳生産者の間に将来の
飲用乳取引に対する不安が高まっており、これを反映して飲用乳生産枠の取引価
格が大幅に低下している。10月初旬に実施された入札の取引価格は、19.44豪セン
ト(約15円:100セント=77.0円)/リットルと昨年11月の平均落札価格66.22豪
セント(約51円)/リットルと比べると、 3 分の 1 以下へと低下した。

◇図:NSW州の飲用乳生産枠取引価格の推移◇


各州独自で飲用乳取引制度を実施

 豪州における飲用乳の生産、流通および販売は、州政府の管轄とされており、
各州独自の飲用乳取引制度を実施している。

 このうち、人口が最も多いNSW州では、生産者ごとの飲用乳生産枠の割当と生産
者販売価格の支持が行われており、生産枠は、州の酪農公社による入札を通じて
相互に取引されている。入札は、特定の生産期間(4週間)を付したロットごと
に行われ、売渡申込みと購入申込みの両数量が拮抗する時点の価格を当該ロット
の「市場取引価格」と決定した上で、該当する申込みを当該価格の1本値で落札
させる仕組みとなっている。また、一旦取引された生産枠は、翌期から半永久的
に購入者の権利となる。入札は毎月実施されており、10月初旬に実施された入札
では、約1,500トンの飲用乳生産枠が取引された。年間割当量(約65万トン)から
見るとわずか約0.2%に相当するに過ぎないが、売渡申込みは廃業等の特殊事情に
よるものが多くなっている。


各州の飲用乳制度の規制緩和が背景に

 豪州では、連邦政府の方針により近年各州の飲用乳制度の規制緩和が進められ
ており、NSW州でも、本年 7 月、卸売・小売価格等の規制が撤廃された。これま
では、小売店での牛乳販売は定められた上限価格の範囲内に統制され、特定区域
内の小売店で売られる牛乳は指定乳業メーカーのブランドに限られていたが、今
回の規制緩和により、小売店は価格や仕入先を自由に決定できるようになった。
同州は、これに先立ち本年5月に、生産者販売価格の支持制度を2003年まで5年
間継続することを決定したものの、当該規制緩和の影響により、生産者販売価格
(飲用向け生産者乳価)が引き下げられ、処理マージンも低下する傾向にある。
今後は、隣のビクトリア(VIC)州が飲用乳の生産販売を完全自由化する可能性も
あり、その場合にはコストの安いVIC州産飲用乳がNSW州に流れ込むなど影響は不
可避となる。

 こうした状況から、NSW州の生産者は将来に対する不安を募らせており、飲用乳
生産枠の取引価格が、今後大幅に回復する可能性は薄いとみられている。


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