デイリーボードが酪農乳業分野の規制緩和を批判(NZ)


会長の離任あいさつで政府の政策を批判

 ニュージーランド・デイリーボード(NZDB)は、10月13日、ウェリントンで年
次総会を開催し、長年にわたり同ボードのトップを勤めたスプリング会長の勇退
と、ストーリー新会長の就任などを決議した。

 前会長は同総会で離任に当たっての講演を行い、政府によるNZDBの乳製品輸出
一元管理の見直しを含む酪農乳業分野の規制緩和政策に対して、辛らつな批判を
行った。


政府は一連の規制緩和政策を推進

 NZ政府は、ここ数年、エネルギー、運輸、通信分野などを中心に大胆な規制緩
和を推進しており、これらの分野では国内産業の活性化に一定の成果を収めてき
た。このため政府は、酪農乳業を含む農業分野についても、NZDBなどの生産者ボ
ードの改革を柱とする規制緩和を提唱しており、すべての生産者ボードは、11月
15日までに各々の具体的な改革・合理化案を政府に提出することが求められてい
た。


輸出一元管理の廃止はNZ国民に不利益

 前会長は、従来の規制緩和政策を農業分野にそのまま適用することは誤りであ
り、輸出一元管理の廃止によって海外市場への輸出販売力が低下することから、
国民の利益に反する結果を招くとして、政府を強く批判した。同会長は、その裏
付けとして、輸出一元管理が廃止されて輸出の窓口が分散された場合の影響につ
いて、 2 つの独立した調査を実施したが、いずれも乳製品の輸出額が約 2 億NZ
ドル(約131億円: 1 NZドル=65.5円)も減少するとの結論に至ったことを挙げ
た。また、NZDBが11月に政府に提出する改革・合理化案の内容は「政府の諮問に
回答を与えるものとはならないだろう」と述べ、現時点ではボード自身が輸出一
元管理の見直しを政府に明確に提案することはないとの見通しを示唆した。

 さらに、前会長は、酪農乳業分野の規制緩和は酪農家自身が決定するべきもの
であり、酪農家はNZDBによる乳製品輸出一元管理の維持を明確に望んでいると主
張した。


政府の立場を後退させる状況も浮上

 これに対し、政府側は、規制緩和によって酪農乳業界にも競争原理を導入する
ことが国民の利益につながると反論した。

 しかし、現在、@国際空港の民営化問題で一部の議員が離反し、政権基盤が弱
体化していること、A急激な規制緩和政策に対する国民の反感が高まり、政府支
持率が低下していること、B来年には総選挙を実施せざるを得なくなる可能性が
高いこと、などから政府は極めて苦しい状況に追い込まれている。このため、各
ボードの改革・合理化案をそのまま直ちに実施に移す考えはないと首相自ら発言
しており、これまでの規制緩和推進の立場を明らかに後退させる姿勢も示してい
る。


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