内閣改造で地方農村部重視を強調(豪州)


アンダーソン第一次産業相は運輸・地域サービス相に就任

 10月3日の連邦総選挙の結果から、自由党と国民党による保守連合与党政権が
続行されることになり、それを受けて、ハワード首相は2期目の閣僚リストを発
表した。同リストによると、フィッシャー副首相兼貿易相、コステロ蔵相、ダウ
ナー外相の留任が決まるなど、全体としては小幅な内閣改造となった。

 しかし組閣に当たり、雇用問題や2年後に迫ったシドニー・オリンピックへの
対応などと並び、地方農村社会重視の姿勢が打ち出されることとなり、従前の運
輸担当に、地域サービスが新たに付加され、アンダーソン第1次産業相が運輸・
地域サービス相に任命された。


地方農村部の支持ばん回が狙い

 これは地方農村部での支持ばん回を狙ったもので、特に、極右のワン・ネーシ
ョン党に、現政権に対する反発票が流れたことを強く意識したものといえる。規
制緩和など自由競争の強化を目指したハワード政権の一連の経済改革に対しては、
地方切り捨てとの不満の声が上がっていた。実際、銀行や医療施設などの公共機
関の統廃合が進んでいる地方では、公共サービスの低下に対し人々の不満は高ま
っており、地方農村部を支持基盤とする国民党への反発を招いていた。

 このため、今回の組閣に関して全国農業者連盟は、地方農村部対策に重点が置
かれたものとして歓迎の意を示すとともに、選挙公約でもあった銀行決済業務や
インターネット通信網の改善などを含む地方公共サービスの拡充に期待を表明し
ている。


第一次産業・エネルギー省から農漁林業省へ

 また、これまで農業や鉱物資源などを所轄していた第1次産業・エネルギー省
から、資源分野を切り離し、新たに農漁林業省とする行政組織の改定が行われ、
大臣にヴェイル運輸相が任命された。農漁林業省には、これまで保健省によって
行われていた食品基準に関する策定業務が移管されるなど、その権限は農業生産
にとどまらず食品加工分野にまで及ぶことになる。


国民党の影響力が強化

 ハワード首相は今回の組織改定について、より垂直的な行政組織の編成と合理
化を狙ったものと語っているが、総選挙で自由党が比較的大きく議席を失い、連
合政権内での国民党の影響力が強まったことも背景に挙げられる。国民党党首の
フィッシャー貿易相、同副党首のアンダーソン運輸・地方サービス相、ヴェイル
農漁林業相という3閣僚の国民党指定席は、基本的に変わらないものの、輸出支
援などを行う輸出金融保証公社が産業省配下から貿易省に移されるなど、それぞ
れの権限は従来よりも拡充されたといえる。


貿易自由化と国内保護との調整が今後の課題

 しかし、国内保護を主張する豚肉生産者の反連合政権選挙キャンペーンにみら
れたように、豪州政府の推進する農産物貿易の自由化は、自国の農業のうち国際
競争力の低い部門への痛みを伴うものとなっている。このため、地方農村社会重
視を打ち出した新政権が、今後、どのような形で政策的な調整を図っていくのか
注目される。


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