三中全会、農村経済の発展を重視(中国)


主要な議題は農村経済の活性化

 中国共産党の第15期中央委員会第三回全体会議(三中全会)が、10月12日〜14
日、北京で開催された。三中全会は、50年に一度行われる党大会の翌年に具体的
な課題への対応を討議するために開催されるものである。昨年9月に行われた第
15回党大会では、基本政策として「農業の産業化」が提唱されており、今回の三
中全会では、中国経済の発展には人口の7割以上を占める農民の所得増加や農村
の安定が不可欠との判断から、農村経済の活性化を中心とした議題が討議された。

 なお、今回は故ケ小平氏が改革・開放政策を打ち出した78年第11期三中全会か
ら20周年を迎えたことから、その歩みを総括するとともに、今後も農村を基盤と
する同政策の路線を踏襲していくことが確認された。


生産請負制の堅持と農地使用期限延長がかなめ

 今回の決議事項の目玉は、生産請負制の徹底と農地使用期限の30年延長である。
中国では土地の個人所有が認められておらず、農家は国(実際は所属する村)と
一定の生産物を納めれば残りは自由な販売が可能となる請負契約を結ぶことによ
って、土地の利用権を確保している。政府の生産請負制堅持の表明や、請負期間
の従来の15年から30年への延長は、生産意欲を一段と刺激することで農民の農地
への充分な投資を促し、将来にわたって農産物を安定的に確保することが狙いと
みられる。

 また、立ち後れている農村の民主化については、村民委員会(村役場に相当)
の直接選挙の拡大が打ち出されており、改革・開放による自由化によって崩れた
農村秩序の再構築を通じて、党幹部の汚職や都市部との経済格差など農村におけ
るさまざまな問題の解決が期待されている。

 なお、農村経済の活性化や農村部の失業対策として、郷鎮企業を育成するとと
もに、農村地域に小都市を造り、地域経済の基盤を強化することも提唱されてい
る。


畜産業にも特段の発展を期待

 また、今回の会議では、農業生産力と国民消費レベルの向上に伴い、畜産業を
さらに重要な産業として位置付けることを提言している。中でも、中国で最も重
要な養豚産業をさらに発展させていくとともに、牛や羊などの草食家畜の飼養を
柱とした穀物節約型畜産を畜産業発展のけん引力にすることを推奨している。

 また、優良品種の普及および飼養・防疫技術の向上によって生産コストの低減
を図り、収益を高めるよう指導するとしている。


8 %成長達成には農村経済の発展が不可欠

 党首脳部が農村改革を重視する背景には、3月の全国人民代表大会で掲げた経
済改革や国有企業改革が遅々として進まないことが挙げられる。これらの諸改革
は、主に都市部を舞台とした内需拡大を意図したものであるが、都市部における
経済の停滞による消費不振は、年初目標とした8%経済成長への大きな足かせと
なりつつある。党首脳部は農民の所得水準が高まり農村経済が活性化すれば、農
民の購買力が向上することで家電などの耐久消費財の大量在庫問題も解決でき、
さらに、来年以降の高水準の経済成長も維持できるとみている。言い換えれば、
農村改革重視の政策は、都市部における高度成長の急激な減速を農村部で補おう
とするものであり、今後、農村経済の発展によって中国が新たな成長の軌道に乗
れるかどうかが注目される。


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