99年の脱脂粉乳の輸入割当は大幅減少(タイ)


牛乳・乳製品需要、通貨危機以降は低下

 タイの牛乳・乳製品需要は、これまでの順調な経済の発展に伴い、飛躍的に拡
大してきた。96年には生乳生産量が47万トン、輸入量が109万トン(生乳換算)と
なり、消費量は151万トンとなった。また、 1 人当たりの年間牛乳消費量も92年
の14.7kgに対し、96年には25.2kgに増加した。

 しかし、97年7月の通貨危機以降、牛乳・乳製品の需要は、輸入乳製品の高騰、
生乳最低取引価格の引き上げなどによる牛乳・乳製品価格の値上がりや経済の停
滞による収入減少の影響を受け低下している。


割当数量は需要の減退を反映して減少

 こうした中、タイ政府畜産政策委員会は、99年の乳製品の輸入割当数量を決定
した。

 同委員会によって決定された割当数量は、脱脂粉乳が前年の 8 万 8 千トンに
対し、約 2 万トン削減されて 6 万8,500トンとなった。このうち、5万8,500ト
ンは、従前の乳飲料、コンデンスミルクなどの乳製品製造業者、輸入業者などに
割り当てられるが、残りの1万トンは、追加の原料を必要とする業者もしくは新
規に参入する業者に割り当てられる。なお、関税割当数量内の関税率は5%、こ
れを超えるものについては228%の高率関税が課せられる。

 また、原料乳および飲用牛乳の関税割当数量は98年とほぼ同量の約 2 千 3 百
トンおよび約27トンとなっている。この数量内の関税率はそれぞれ20%で、これ
を超える数量については、原料乳が43.5%、飲用牛乳が88.5%となっている。

 今回の脱脂粉乳の割当数量削減は、長引く経済の低迷による牛乳・乳製品の消
費の減退、乳業各社の資金繰りの悪化による在庫数量の圧縮などにより、輸入量
がかなり減少するとの見通しに基づいている。

 なお、本年 1 月から 9 月までの脱脂粉乳の輸入量は、2万トン(速報)にも
満たない状況となっており、今年の輸入割当公表時においても、割当数量の相当
量が未消化に終わるものと予想されていた。


バーツは回復基調も、拭えぬ不透明感

 一方、バーツ相場は回復に向かっており、輸入乳製品価格の低下は牛乳・乳製
品価格の引き下げをもたらしている。

 しかしながら、失業率の上昇などにより、依然としてタイ経済は低迷状態が続
き収入の回復が見込めないこと、バーツは以前より安定感はあるものの、先行き
はなお不透明感が強いこと、財政難にある政府は、関税率の引き下げもしくは撤
廃ができる状況にないことなどから、乳業各社は、今後も引き続き苦しい経営が
続くものとみられている。


元のページに戻る