ロシアへの310万トンの食糧援助を発表(米国)


援助品目は、小麦のほか牛肉、豚肉、脱脂粉乳など

 グリックマン農務長官は、11月 6 日、ロシアに対する310万トンの食糧援助の
実施について、ロシア政府と大筋で合意したと発表した。その内訳は、小麦150万
トン、その他の農畜産物10万トンの無償援助およびPL480号タイトルT(低利融資
による輸出プログラム)に基づく農畜産物150万トンの販売となっており、総額で
は、FOB(本船渡し)ベースで060億2,500万ドル(約762億円: 1 ドル=122円で
換算)に上るとしている。米国はロシアに対し、93年度にも8億6,600万ドル(約
1,057億円)相当の食糧援助を行っており、今回はそれ以来最大規模のものとなる。

 このうち、タイトルTによる援助輸出の対象となる品目は、牛肉12万トン、豚
肉 5 万トン、脱脂粉乳 3 万トンのほか、トウモロコシ50万トン、大豆20万トン
などとなっている。鶏肉は今回の対象品目から除外されているが、ロシアは米国
にとって最大の鶏肉輸出先であることから、USDAは、今後、鶏肉に関して、今回
の合意とは別の新たな枠組みにより、輸出振興策を検討していることを明らかに
している。


早ければ、12月初旬にも援助輸出開始

 今回の食糧援助は、ロシア政府が10月27日、米国に対し公式に要請を行ったこ
とから本格的な協議が開始されたが、農務長官の発表までわずか1週間余りとい
う非常に早いペースで決定がなされている。

 援助される食糧の配分方法などの詳細については、今後詰めの作業が残されて
いるが、早ければ12月初旬にも農畜産物の輸出が開始されるものと期待されてい
る。

 今回の計画によれば、ロシア政府は、米国から援助された小麦を食糧難に陥っ
ている地域で販売し、得られた収益を経済復興のため利用するものとされており、
この収益の使用に当たっては、事前に米国政府の承認が必要であるとしている。


今後のロシアの食糧事情に応じて、さらなる追加援助も

 グリックマン農務長官は、今回の発表の中で、今回の食糧援助がロシア国民の
食糧難を救済するものであると同時に、農産物価格の低迷により被害を受けてい
る米国の生産者に対する支援にもなるものであると強調している。

 当初ロシア側は、700万トンの農畜産物の援助を要望したとされており、今後、
ロシアの食糧事情に応じて、米国政府からのさらなる追加援助があるものと見込
まれている。

 ところで、今回の食糧援助計画は、USDAが 7 月18日に小麦250万トンの無償援
助を発表したのに続く今年 2 回目の大きなものである。 7 月発表分については、
10月末までに、その全量の割当てが終了したが、価格回復効果については、関係
者の評価が分かれている。

 米国が、海外援助の名目の下、輸出を増加させることについては、他の農産物
輸出国からの批判もあり、今後の成り行きが注目される。


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