USDA、肉豚取引に係る調査報告書を発表(米国)


肉豚の主要生産地域の一つである西部コーンベルト地域を対象に調査

 米国では、食肉処理加工業者(パッカー)の寡占化、集中化がさらに進んでい
ることから、肉牛および肉豚生産者の間に公正な競争による取引が阻害されてい
るとの不満が高まっている。こうした状況を受けて、米農務省(USDA)は、10月
8日、西部コーンベルト地域における肉豚取引のデータの分析を基に、肉豚取引
の実態に関する調査報告書を発表した。

 今回の調査は、96年 1 月における 1 ヵ月間の取引データを対象に実施され、
対象となったパッカーは4社、12工場であり、地域的には、アイオワ州、ミネソ
タ州南部、ネブラスカ州東部、サウスダコタ州南東部にわたっている。また、調
査対象となったデータは、取引件数で6万030千件、肉豚頭数では290万頭に及ん
でいる。なお、対象となったパッカーの年間と畜頭数は3千4百万頭であり、96
年の全国のと畜頭数の約37%を占めている。


肥育豚の取引きは、依然として、スポット取引が主流

 調査報告書によると、現在見られる取引形態は、@スポット取引(と畜場やパ
ッカーの肉豚集積所における売買が主流。生体市場取引も含む。)、A取引頭数
とその引き渡しスケジュールのみを定めた簡易な契約販売、B諸条件を明確に定
めた契約販売(契約条件は各契約によって異なる)、C引き渡し期日と支払条件
を前もって定めた先物契約の4つである。このうち、大規模生産者の多くが契約
に基づく販売を利用しているのに対して、小規模生産者は、スポット取引での販
売割合が最も多くなっている。

 一方、パッカーの取引頭数を取引形態別にみると、約79%がスポット取引(重
量のみによる取引と枝肉評価を加味した取引がそれぞれ 2 分の 1 を占める)、
約20%が契約販売(枝肉評価を加味した取引が主)により購入されており、依然
としてスポット取引への依存度が高い。しかし、スポット取引から契約販売へ、
また、重量のみによる取引から枝肉評価を加味した取引への移行は、今後とも進
展していくとしている。

 また、小規模生産者が販売した肉豚は、歩留の点で劣るものが多く見られる傾
向にある。このため生産者の平均売買価格を販売頭数規模別に見た場合、調査期
間 ( 1 ヵ月)内の販売頭数が1千頭までは、販売頭数が多いほど平均価格が上
昇する結果となっている。


USDA、公表取引価格の算定方式の改善を検討

 同報告書では、USDAが公表している豚肉の基礎価格(枝肉ベースでの農家販売
価格)は、パッカーと生産者などの間で一般的となっている歩留率や背脂肪厚と
いった枝肉評価に関するプレミアムの要素を現状に照らし合わせて充分に勘案し
ていないため、現在公表している価格は、一般的に、実際に農家に支払われる価
格より低いことを認めた。このためUSDAは今後、公表する取引価格の算定方法の
改善を図りたいとしている。

 一方、全国豚肉生産者協議会(NPPC)や全国豚肉ボードは、公正な競争条件の
下での取引価格体系の確立という生産者からの要望に応えるべく、新たな肉豚取
引価格の公表について準備を進めるとともに、パッカーに自主的な取引価格の公
表を呼びかけていた。これに呼応して、生産者協同組合が所有するパッカーであ
るファームランドは、10月中旬から同社の4工場における取引価格をNPPCのイン
ターネットを通じて公表している。


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