◇絵でみる需給動向◇
近年、 経済成長を追い風として堅調に推移してきた豪州の東南アジアへの生体 牛輸出が、 減速局面を迎えている。 豪州食肉畜産公社 (AMLC) の発表によると、 97年1〜10月の東南アジアへの生体牛輸出は63万4千頭で、 前年同期比で 18%の増加となった。 しかしながら、 これを期間別にみると、 6月までの上半 期については前年同期比41.2%増と大きく増加したのに対して、 後半の7〜 10月については同8.4%減と逆に減少している。 さらに、 これを月別にみる と、 上半期の各月については前年同月比で各月21〜65%の増加を示したのに 対し、 7月は同5.3%増と伸び率が鈍化し、 8月以降は前年同月を下回る結果 となった。 ◇図:東南アジアへの月別生体牛輸出◇
豪州の生体牛輸出は年々、 増加の一途をたどっているが、 その大部分は経済成 長が著しいインドネシア、 フィリピンをはじめとした東南アジア向けとなってお り、 97年1〜10月の輸出シェアは全体 (75万9千頭) の83%を占めてい る。 そのような中、 7月以降に輸出が減少した背景としては、 ほぼ同時期に始まっ たタイバーツなど東南アジア通貨の豪州通貨に対する価値の急落が挙げられる。 この東南アジアの金融不安は、 暫くは好転する材料が見当たらないと考えられる ことから、 東南アジアの牛肉需要の高まりに支えられ、 順風満帆に見えた豪州の 生体牛輸出は、 これまで経験のない困難な試練の時を迎えていると言えよう。 ◇図:国別の生体牛輸出割合◇
豪州は、 東南アジアという最大の輸出地域への生体牛輸出の減速に直面する中 で、 今後、 リビア、 エジプト等の北アフリカ、 中東地域への輸出に力を注ぐもの とみられる。 同地域は、 97年1〜10月の輸出シェアが既に13.7%となっ ており、 東南アジアに次ぐ輸出市場となっている。 また、 目覚しい経済成長に伴 い、 牛肉需要が急増している中国市場への輸出も、 検疫問題の解決が進展すると 見込まれることから、 大幅に増加することが期待されている。
元のページに戻る