◇絵でみる需給動向◇
EUの牛肉管理委員会は、 11月28日、 域内の肉牛価格が回復傾向にあること から、 98年1月より介入在庫から本格的な放出を開始することを決定した。 今 回は、 加工用として1万6,820トンの売り渡しを行うとともに、 輸出向けと して約9,100トンの放出を予定していることから、 放出量は合計で約2万6 千トンに及ぶとみられる。 これまで、 介入在庫の放出は、 スペイン、 イタリアなどの一部の国で既に実施 されてきたが、 各国が足並みを揃えた本格的な放出は、 96年3月の牛海綿状脳 症 (BSE) 問題の発生によって介入買い入れが発動されて以来、 初めてとなる。
牛肉の介入買い入れは、96年3月のBSE問題発生によって生じた域内の需給ギ ャップを埋め合わせるために発動されたもので、 その後、 牛肉需要の深刻な低迷 により在庫量は増加の一途をたどってきた (下図参照) 。 97年の買い入れ量は約25万トンに上ったとみられ、 これにより97年末の 在庫量は約68万トンに達したと見込まれている。 これは、 EUの年間牛肉生産量 の8%強に相当している。 また、 介入在庫量を国別 (97年9月末時点) にみると、 EUの二大牛肉生産国 であるドイツが全体の33%、フランスが19%を占めており、 両国ではBSE問題 の震源地となったイギリスを上回る在庫を抱えている。 続いて、 イギリスが17 %、 アイルランドが12%となっており、 これら上位4カ国で全体の8割以上を 占めている。 EUの国別介入在庫量(97年9月末現在)
このように、本格的な在庫放出が決定された背景には、 成牛価格がほぼBSE問題 発生前の水準に回復したことが挙げられる (左図参照) 。 同価格は、 96年8月 の1. 22ECU (170円) /kgを底に、 その後、 牛肉需要の回復や介入買い上 げ措置などの効果もあって緩慢ながらも上昇に転じ、 97年9月には1.37EC U (185円) /kgに達した。
しかしながら、 EU平均では成牛価格が回復しているものの、 加盟国の間でその 状況は大きく異なっている。 例えば、 イギリスでは、 牛肉の禁輸措置が長期化し ていることに加え、 ポンド高による輸入増の影響もあり、 成牛価格は再び低落傾 向を強めている (97年12月第1週の価格は1. 19ECU (173円) /kgで ピーク時となった97年8月第4週から10. 3%低下) 。 このような状況下、 イギリス、 アイルランドを中心に介入買い入れを求める声 が強まったことから、 EUの牛肉管理委員会は、 12月12日、 既に停止していた 牛肉の介入買い入れを再開することを決定した。
元のページに戻る