世界の飼料穀物の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○東欧の飼料穀物生産・輸出動向に注目


米国のトウモロコシ輸出予測に陰り

 米農務省 (USDA) が12月に発表した需給予測によると、 97/98年度 (9
7年9月〜98年8月) の米国のトウモロコシの輸出量は、 前月の予測より50
百万ブッシェル (127万トン) 下方修正され、 前年比4. 4%増の1, 87
5百万ブッシェル (47.6百万トン) にとどまる見込みとなった。 また、 この
輸出下方修正により、 97/98年度末の期末在庫は、 前年度比7.8%増の9
53百万ブッシェル (24.2百万トン) に達する見込みとなった。 97/98
年度には、 東欧諸国における飼料穀物生産が好調で、 国際市場で米国産飼料穀物
と競合することが懸念されること、 および東南アジアの経済混乱が当該地域の飼
料穀物需要に影響を及ぼすと見られていることから、 輸出見込みが厳しく下方修
正されたと見られている。 


東欧諸国の飼料穀物生産が急増

 97/98年度は、 東欧諸国の飼料穀物の生産が順調であり、 国際飼料穀物市
場にかなりの影響を及ぼすと見られている。 

 ルーマニア、 ハンガリー等の東欧地域は、 もともと、 適度な降雨量と気温、 さ
らに良質な土壌に恵まれ、 かつては米国を凌ぐ主要な飼料穀物の輸出地域であっ
た。 特に、 ルーマニアは、 第二次大戦前には、 アルゼンチンに次ぐ世界第2位の
トウモロコシ輸出国として国際市場に影響を及ぼした実績を有している。 

 しかし、 89年から始まった旧政権の崩壊と、 それに伴う経済混乱は、 これら
の東欧諸国で多くの農業生産資材の不足を招き、 国営の大規模な家畜生産施設の
大部分は、 事実上、 運営不能の状況となった。 このため、 多数の家畜がやむなく
と畜処分され、 飼養頭数は大幅に減少した。 その後、 96年頃までには各国の経
済的な混乱が回復し、 気象条件に恵まれたこともあって、 飼料穀物の生産は順調
に回復した。 特に、 97/98年度のトウモロコシ生産は、 前年度を13%も上
回り、 東欧諸国合計で2千9百万トンに近い水準となった。 また、 97/98年
度は、 収穫後の降雨で穀物の品質が劣化し、 食用から飼料用に向けられたものが
多く、 飼料穀物の供給をさらに増加させた。 

東欧諸国のトウモロコシ生産・輸出

 資料:USDA「Grain, World Markets and Trade」
  注:東欧諸国は、アルバニア、ブルガリア、チェコ、ハンガリー、ポーラン
    ド、ルーマニア、スロバキア、旧ユーゴスラビアを含む。

輸出インフラの整備が急務

 一方、 かつて大量処分が行われた東欧諸国の家畜生産は、 飼養頭数の回復が遅
れており、 生産された飼料穀物の輸出余力を高める結果となっている。 ただし、 
かつての東欧近隣諸国への輸出とは異なり、 アジアを含めた国際市場に輸出する
に当たっては、 港湾施設等のインフラの整備が必要となるにもかかわらず、 この
整備・拡充が大幅に遅れている。 各国の現状の港湾設備は取扱能力が限られてい
る上に、 施設が旧式で非効率的であり、 ルーマニア産のトウモロコシの輸出など
が大幅に影響を受けている。 また、 旧ユーゴスラビアの動乱も、 この地域の物資
輸送に制約を加えている。 97/98年度の飼料穀物の国際貿易を見通すに当た
っては、 アジア諸国の経済混乱の影響が最大の鍵になると見られていたが、 ここ
にきて東欧諸国の動向も重要な要素として目を離せない状況となりつつある。 



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