EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○好調なチーズ生産にやや陰り


97年1〜9月の生産量はわずかに増加

 ドイツ市場価格情報センター(ZMP) によれば、 97年1〜9月のチーズ生産量
は、 前年同期比0. 7%増の443万1千トンとわずかな増加にとどまった。 

 近年のチーズ生産は、 域内需要、 域外輸出ともに好調に推移したことから、 年
率2%前後の着実な伸びを示し、 92年の545万トン (15カ国の合計) から
96年には595万トンと5年間で50万トン (9%増) も増加した。 しかし、 
97年に入ってからは、 域外輸出の減少の影響などから、 わずかな伸びにとどま
った。 

EU主要国のチーズ生産量(各年1〜9月計)

 資料:ZMP
 (注)1 牛乳を原料としたもの
    2 数値は暫定値
    3 前年同期比は、閏年調整後の増減率


生乳生産の3分の1以上がチーズ仕向け

 96年のEUのチーズ生産量は、 595万トンであった。 EUでは、 生乳生産量の
3分の1以上がチーズ生産に仕向けられており、 乳製品の中で極めて重要な位置
を占めている。 さらに、 EUのチーズ生産は、 長い歴史と伝統を有しており、 それ
ぞれの国や地域に根差した極めて多様なタイプのチーズが生産されている。 

 また、 EUでは、 生産されたチーズの9割強が域内で消費されており、 域外に輸
出されるのは1割弱に過ぎない。 しかし、 それにもかかわらず、 EUのチーズ輸出
は世界の貿易量の約半分を占めており、 国際市場に大きな影響力を有している。 


特に高い伸びをみせるドイツ

 次に、 国別のチーズ生産量をみると、 フランスが前年同期比0.9%増とわず
かな伸びであったのに対し、 ドイツは同3.4%増と主要生産国の中で特に高い
伸びを示した。 

 95年までEU最大のチーズ生産国はフランスであったが、 96年にドイツがト
ップの座を奪い、 97年に入ってもその差を開きつつある。 フランスでは、 一人
当たりの年間チーズ消費量が20kgを超え、 EU平均の15kgを大きく上回ってお
り、 国内市場はすでに成熟しているといえる。 これに対して、 ドイツはファース
トフード部門からの需要増が顕著なことなど国内市場が拡大傾向にあることに加
え、 ロシア向けの輸出が増加していることもあって、 生産量はここ5年間で18
%も増加した。 

 なお、 ドイツ、 フランスの96年のチーズ生産量の合計は303万トンに達し、 
EU全体の過半のシェアを占めている。 


域内需要は順調、 輸出はやや減少か

 また、 97年前半のEU全体のチーズ域外輸出は、 輸出補助金の削減約束を実行
するため輸出許可証の発行停止措置をとったことの影響などにより、 プロセスチ
ーズを中心に前年同期を5%程度 (約1万7千トン) 下回る水準となった。 これ
を国別にみると、 ドイツが18%増加と好調であったのに対し、 フランスは16
%減少しており、 対照的な状況となっている。 

 一方、 この間のチーズの在庫水準は、 10〜12万トンと安定的に推移してい
ることから、 わずかながら生産が増加したのは、 域内需要に支えられたためと考
えられる。 

 なお、ZMPは、 97年通年のチーズ需給 (牛の乳以外からのものを含む) につい
て、 生産量が前年比0. 6%増の652万5千トン、 消費量が1. 2%増の6
32万5千トン、 輸出量が4. 8%減の50万トンと見込んでいる。 


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