EUの豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○豚枝肉卸売価格が低下



97年12月は前月を7. 1%下回る

 97年のEUの豚枝肉卸売価格(15カ国平均の市場参考価格、 以下「豚肉価格」) 
は、 3月から5月にかけては、 EU最大の生体豚輸出国であるオランダなどで発生
した豚コレラの影響などにより急騰したものの、その後、7月にかけて低下し、 9
月までは小戻しの水準で推移した (168〜175ECU (約2万5千円)/100
kg) 。 しかし、 10月からは、 一転して価格の低下傾向が鮮明になっている (左
図参照) 。 

 この結果、 12月の豚肉価格は、 前月を7.1% (前年同月では3.3%) 下
回る143. 1ECU (同2万1千円) /100kgとなった。 また、 これを国別に
見ると、各国とも軒並み低下し、EU最大の豚肉生産国であるドイツが前月を3.6
%下回る151. 6ECU (同2万2千円) 、 第2位の生産国であるスペインが9. 
7%下回る146.5ECU (同2万1千円)、 オランダが15.3%下回る118. 
8ECU (同1万7千円) となった。 

◇図:主要国の豚枝肉卸売価格(市場参考価格)◇


肉豚供給の増加が背景

 この価格低下の背景としては、 豚コレラの影響で豚肉価格が堅調に推移した結
果、 オランダを除く主要国の繁殖用雌豚頭数が押し並べて増加し、 肉豚供給が増
加したことが挙げられる。 ちなみに、 97年8月期センサスによると、 EUの繁殖
用雌豚頭数は、 15カ国合計で、 前年同期に比べると2.3%の増加 (約1,2
68万頭) となった。 これを国別に見ると、 ドイツ、 スペイン、 フランスではそ
れぞれ2.4%、 5.4%、 1.8%の増加、 EU最大の豚肉輸出国であるデンマ
ークでは6. 1%の増加となった。 

 また、 オランダでは、 豚コレラの発生が沈静化し、 生体豚の移動制限区域が徐
々に解除され、 域内向けの輸出が可能となったこともEUの豚肉価格に影響してい
る。 さらに、 業界関係者によれば、 一時期の豚肉価格の高騰や消費者の健康志向
の高まりなどにより、 タイからの鶏肉輸入が増加したことが、 豚肉価格の低下に
一層拍車をかけているとしている。 


EU委員会および各国の対応に注目

 96年に豚肉価格が低下した時は、 デンマークやオランダなどから、 EU委員会
に対して豚肉の民間在庫補助制度 (APS制度:企業が一定期間、豚肉を調整保管す
る場合に、 補助金を交付する制度) の実施を求める声が出た。 これに対して、 同
委員会は、APSの代替措置として豚肉 (冷凍、 冷蔵) の一部の品目に対する輸出補
助金の交付を再開したという経緯がある。 

 EUの豚肉諮問委員会の報告によれば、 EUの豚の出荷頭数は、 98年第2四半期
以降増加に転じるとしている。 また、 それに伴い、 豚肉価格も一層低下すること
を予測している。 したがって、 今後は、 EU委員会および各国が、 この豚肉市況の
さらなる軟化に、 どのような対応を図るのか注目される。 



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