香港で鳥インフルエンザ発生 (中国)



 昨年香港で確認された新型インフルエンザA(H5N1) をめぐり、 波紋が広がっ
ている。 このウイルスは、 元来鳥のインフルエンザウイルスであり、 これまでは
人に感染することはないものと考えられていた。 しかし、 香港政府の発表による
と、 97年5月以降、 本年1月3日現在で感染者16名 (うち4名死亡) 、 疑い
5名の計21名が確認されている。 

「家きん肉消費大国」 香港の不安

 香港は、 年間1人当たりでは家きん肉消費量が48kg (可食重量ベース、 米国
農務省。 以下同じ。 ) で、 米国、 イスラエルを凌ぐ世界最大の家きん肉 「消費大
国」 である。 また、 96年の家きん肉輸入量が77万9千トン (骨付き、 可食重
量ベース、 うちブロイラー72万6千トン) と世界の家きん肉総輸入量の18%
を占め、 ロシアに次ぐシェアを有している。 輸入量の伸びも著しく、 ここ数年、 
年率10%〜30%台の伸びを維持するとともに、 97年の輸入は87万トンが
見込まれている。 

 こうした中、 インフルエンザ問題の感染経路等の究明を急ぐ香港特別行政区政
府は12月23日、 同日深夜より1日当たり7万5千羽ともいわれる中国本土産
鶏の搬入を当面停止することを発表、 同26日に、 主要感染径路は鳥からとする
検査結果を公表するとともに、 28日には香港の市場や養鶏場のすべての鶏12
0万羽の焼却処分 (実施は29日から) を発表するなど、 次々に対応策を打ち出
した。 その結果、 本年1月上旬までに百数十万羽の鶏が処分されたといわれてお
り、 市場から生きた鶏および鶏肉がほとんど姿を消すこととなった。 

 今後、 米国や台湾等からの輸入品で需要の一部をまかなうとしても、 先行きが
はっきりしないだけに、 1月28日に迫った 「春節」  (旧正月) を前に、 香港の
業界関係者は不安と苛立ちを隠せないでいるようだ。 


家きん肉の輸入等をめぐるわが国の対応

 一方、 昨年12月15日、 香港家畜衛生当局よりわが国に対し、 香港で鶏に強
毒型の鳥インフルエンザの発生があった旨の通報があった。 農林水産省畜産局衛
生課によれば、 対外的な動物検疫関係でのわが国の対応は次のようになっている。 

1 家きん肉の輸入

 わが国に輸入される家きん肉については、 家畜衛生条件において、 輸出国に強
毒型の鳥インフルエンザの発生がないことを要求しているため、 同インフルエン
ザが発生した場合、 香港はわが国向けに家きん肉を輸出できないことになる。 な
お、 97年、 日本は香港からの輸入実績がない。 

2 初生ひなの輸入

 強毒型の鳥インフルエンザ発生国における発生農場からの初生ひなの輸入は禁
止 (中国の場合は、 国に発生がないことを要求) 。 発生国から輸入される初生ひ
なについてウイルス分離を実施することとしているが、 香港は家畜衛生条件を結
んでいないため、 事実上輸入できない。 

3 家きん以外の鳥類の輸入

 発生国から輸入される家きん以外の鳥類については、 生産地域の半径50km以
内に強毒性の鳥インフルエンザの発生がない旨の証明書を輸出国に要求している。 
したがって、 現在、 香港からは輸入できないこととなっている。 なお、 動物検疫
所において抽出によるウイルス分離は実施中である。 

 なお、 人との関係 (鶏肉を食べた場合のインフルエンザへの感染懸念) につい
ては、 厚生省は次のような見解を発表している。 

  「食品を食べることによりインフルエンザウイルスが人に感染することは世界
にも報告されておらず、 一般的には考えられない。 また、 鶏肉を処理する過程で、 
塩素剤を使用している。 これにより、 たとえインフルエンザウイルスが鶏肉に付
着していたとしても不活性化する。 さらに、 実際に食べる場合には、 加熱すれば
インフルエンザウイルスは死滅するので、 鶏肉を食べることによりインフルエン
ザに感染することは考えられない。 」  (厚生省ホームページの Q&Aより。 平成9
年12月25日更新) 

 また、 畜産局衛生課によれば、 日本国内における防疫対応は次のとおりである。 

1 過去の発生状況

 今回の香港で問題とされているH5型、 あるいはH7型という鳥インフルエンザ
強毒ウイルスによる流行は、 日本では1925年 (H7N7による発生) 以降ない。 

2 調査の結果

 昨年2月、 養鶏農家を対象に実施した鳥インフルエンザの抗体調査結果からは、 
H5型及びH7型の陽性例は認められていない。 

3 今後の対応

 万一、 わが国に強毒型の鳥インフルエンザの発生があった場合には、 公衆衛生
上ばかりでなく養鶏上も大きな問題になることから、 現在、 養鶏農家に対する再
度の抗体保有状況等の調査を実施中である。 



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