米国農業団体、 ファストトラックの延期に失望




法案の下院投票を延期

 昨年末クリントン大統領により表明されたファストトラック法案の下院での投
票延期に対し、 法案を支持していた農業関係団体は、 強い失望感を示すとともに、 
引き続き、 同法案の議会通過を支持していく姿勢を明らかにした。 

 クリントン政権は、 3年前から失効しているファストトラック通商交渉権限の
更新を行うため、 関連法案を議会に提出するとともに、 その支持を求めて、 活発
な議会工作を行っていた。 しかしながら、 共和党議員からの十分な支持を得てい
たにもかかわらず、 大統領の出身母体である下院民主党議員からの十分な支持が
得られなかったため、 クリントン大統領は、 ファストトラック法案の下院での投
票を延期せざるを得ない事態に追い込まれた。 


念頭に米州自由貿易圏の形成

 ファストトラック通商交渉権限とは、 議会が大統領に対して通商協定に関する
交渉権限を付与するとともに、 通商協定案に対する議会からの修正要求を制限し、 
政府提案の関連法案を一括審議して賛否を問うこととするものである。 提出され
た法律案は、 北米自由貿易協定(NAFTA) をチリにも拡大し、 さらに米州自由貿易
圏 (FTAA) の形成を図ることが目的とされていた。 


輸出促進を目指す団体からの強い支持

 このような事態に対し、 農業関係団体の中でも、 とりわけ輸出の拡大を目指す
畜産関係団体は、 強い失望の意を表明した。 

 代表的な畜産関係団体の1つである全国肉用牛生産者・牛肉協会 (NCBA) は、 
米国が貿易協定に係る交渉から閉め出されているうちに、 競争相手国が新しい市
場との貿易協定の交渉を進め、 既存市場の拡大をも進めるであろうとして、 投票
延期の決定に対し失望感を示した。 さらに、 交渉権限は単なる手続きを意味する
ものではなく、 米国が貿易協定に係る交渉を行い、 世界の農産物市場に対して公
正さと、 アクセス拡大をもたらすリーダーであり続ける能力を有するかどうかを
決議しようとしているものであるとして、 今後とも、 ファストトラック通商交渉
権限の付与に対して強い支持を続けていく旨を表明した。 

 またこの他に、 全国豚肉生産者協議会 (NPPC) などの団体も、 同法案の議会通
過を後押しする旨を表明している。 


98年内の法案成立は一層困難に

 政府は、 再度同法案の議会通過に向けて努力すると表明しているものの、 98
年は議会の選挙を控えており、 反対派である労働組合は、 意見を共有する議員へ
の強力な支持に動くと考えられるため、 一般的には、 同法案を通過させることは
昨年以上に困難になるとみられている。 



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