EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○97年6月期の牛飼養頭数、 13カ国で減少


総飼養頭数は前年同期比1. 7%減

 欧州統計局は、 先頃、 97年6月時点の牛飼養頭数を発表した。 これによると、 
EUの総飼養頭数は、 前年同期比1. 7%減 (147万頭減) の8, 578万頭
となった。 90年代に入ってからの総飼養頭数の動きをみると、 90〜93年は
減少傾向、 94〜96年はほぼ横ばいで推移したものの、 97年は再び減少とな
った。 

 今回、 総飼養頭数が減少した要因としては、 乳用牛の長期的な減少傾向が底流
にあるが、 加えて、 96年3月にイギリスで発生した牛海綿状脳症(BSE) 問題に
伴う防疫上の淘汰や、 BSE に起因する牛肉消費の減退から過剰対策として実施さ
れた子牛のと畜奨励事業 ( Calf Processing Premium) も大きく影響したものと
考えられる。 さらに、 厳しい経営環境の下、 農家の生産意欲が減退していること
も一因として挙げられる。 


13カ国が減少、 増加はわずか2カ国

 次に、 国別の増減をみると、 前年同期と比較して減少した国が13カ国に上っ
たのに対し、 増加した国はアイルランド、 ギリシャのわずか2カ国であった。 こ
のうち、 飼養頭数が1千万頭を超えるフランス、 ドイツ、 イギリスの上位3国で
は、 それぞれ2.3%、 2.2%、 2.8%の減少となり、 全体の頭数減に大き
く影響している。 一方、 アイルランドの頭数が6年連続で増加していることは特
筆される。 


乳用経産牛は減少、 肉用経産牛は増加傾向

 将来の牛肉生産を予測する上で、 乳用経産牛と肉用経産牛の頭数レベルは重要
なカギを握っているが、 乳用経産牛は前年同期比2.8%減少したのに対し、 肉
用経産牛は1.1%増加した。 このような傾向は、 90年代に入ってからほぼ一
貫した傾向である。 乳用経産牛の減少は、 生乳クォータが固定化される中、 1頭
当たりの乳量が増加していることに起因している。 一方、 肉用経産牛の増加は、 
繁殖雌牛奨励金制度 ( Suckler Cow Premium) により、 結果として肉用牛生産を
刺激する補助制度の効果が大きかったことが挙げられる。 しかしながら、 最近で
は奨励金の交付対象上限頭数にほぼ達していることから、 その伸びは鈍化しつつ
ある。 

 また、 全体の飼養頭数に占める乳用経産牛および肉用経産牛の割合をみると、 
それぞれ25. 1%、 13. 7%となっており、 乳用経産牛は肉用経産牛の約
2倍となっている。 なお、 これを国別でみると大きな差異がみられ、 ドイツ、 イ
タリア、 オランダ、 デンマークなどでは圧倒的に乳用経産牛の割合が高いのに対
し、 フランス、 アイルランド、 スペインでは、 両者がほぼ拮抗している。 


98年のと畜頭数はさらに減少へ

 また、 同時に発表された97年のと畜頭数 (EU15カ国) は、 前年比0.3%
減の2,921万7千頭とわずかに減少が見込まれている。 さらに、 97年の6
月時点の飼養頭数が減少していることから、 98年のと畜頭数もさらに1.9%
減少し、 2, 864万9千頭になると予想されている。 

EUの牛飼養頭数(97年6月)

  資料:欧州統計局
  (注)数値は暫定値



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