米国の鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○伸びが鈍化するブロイラー輸出


前年同期比3. 7%増

 米農務省(USDA)によると、 97年1月から8月までのブロイラーの輸出量 (可
食重量ベース、 骨付き、 以下同じ) は、 前年同期を3.7%上回る137万トン
となった。 

 ブロイラーの輸出は過去20年間一貫して拡大傾向にあり、 特に90年以降は
年率2ケタ成長を続けてきた。 しかし、 97年に入りアジア向け輸出の不振など
から、 これまでの急速な拡大基調にやや陰りが見え始め、 伸び率が急速に鈍化す
る動きを示している。 

◇図1: 輸出量の対前年比◇


明暗分かれた国別輸出−アジア向けは総じて不振

 このうち、 総輸出量の4割以上を占めるロシア向け輸出は、 昨年末、 関税の引
上げを巡るロシア側の通関手続きの停滞から大幅な減少を示したが、 その後は順
調に回復している。 その結果、 97年1月から8月までの同国向け輸出量は、 前
年同期を13. 7%上回る61万1千トンとなった。 

 また、 その他の地域で輸出量が著しい伸びを示しているのは、 NAFTA 加盟国の
メキシコ、 カナダである。 両国を合わせたシェアは総輸出量の8%を占め、 香港
に次ぐ第3位の市場となっており、 97年1月から8月までの輸出量はそれぞれ
前年同期比14. 9%増、 同60. 6%増といずれも急増している。 

 一方、 ロシアに次ぐ輸出シェアを持つ香港向けについては、 中国向けの直接輸
出が徐々に増えてきていること、 および最近の通貨の下落の影響などもあって、 
減少傾向が続いており、97年1月から8月までの輸出量は、前年同期を14.6
%下回る大幅な減少となった。 輸出全体に占めるシェアについても前年同期の2
2. 9%から18. 9%へと大きく縮小している。 また、 日本向けやシンガポ
ール向けについても、 為替の対米ドル安や日本の国内需要が低調なことなどから、 
それぞれ前年同期に比べて19. 4%減、 33. 3%減と大幅な減少となって
おり、 アジア向け輸出は総じて不振となっている。 

◇図2: 国別輸出量の推移◇


98年予測は2%増

 USDAは、 98年のブロイラー輸出量について、 前年を2%上回る215万5千
トン程度になると予測している。 しかしながら、 当面続くと見込まれる東南アジ
アを始めとしたアジア諸国の経済不安や、 これらの市場を巡って競合関係にある
米国産豚肉が増産傾向にあることから、 98年の輸出予測は不確定であるとして
いる。 

 こうした状況下において、 ブロイラー業界関係者の間では、 国内総生産の約1
7%を占める輸出の低迷は業界全体に大きなダメージを与えており、 今後さらに
輸出が減少するならば、 輸出減少分を国内消費で補うためのマーケティング戦略
の変更が必要になるのではないかと懸念している。 



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