世界の飼料穀物の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○飼料穀物収穫が一段落、 今後は需要動向が焦点に


米国のトウモロコシ需給は緩和

 米農務省 (USDA) が11月に公表した需給予測によると、 同国の97/98年
度のトウモロコシ生産は、 収穫期の気象条件が良かったこともあって、 豊作だっ
た前年度を若干上回り、 9,359百万ブッシェル (238百万トン、 前年度比
0.7%増) に達する見込みとなった。 一方、 需要面を見ると、 国内需要は、 飼
料向けを中心に一定の拡大が見込まれるものの、 輸出向け需要は、 国際市場で中
国やEUとの競合が激化していることなどから、 当初の見込みが大幅に下方修正さ
れた。 このため、 97/98年度末 (98年8月末) の期末在庫の見込み数量は、 
928百万ブッシェル (24百万トン、 同5.0%増) と大幅に上方修正され、 
需給はやや緩和される見通しとなった。 


中国・EUとの輸出競争が激化

 米国のトウモロコシ輸出が伸び悩むと見込まれているのは、 米ドル高の為替要
因によるほか、 中国やEUとの輸出競争の激化や、 アジア諸国の経済危機により同
市場の需要が低下すると予測されているためである。 

 中国は、 本年当初の干ばつがトウモロコシ生産に影響している (USDAは前年比
18%の減産を予測) にもかかわらず、 本年、 既に400万トンを超える輸出契
約を成約させたと言われている。 昨年までの2年連続の豊作で大幅に増加した国
内在庫を徐々に切り崩していると見られているが、 在庫水準が急激を低下した場
合には、 今後の国内需給に影響が及ぶことが懸念されている。 

 一方、 EUでは、 小麦の主産地が収穫期に悪天候に見舞われ、 大量の小麦が品質
劣化して飼料用に向けられた。 このため、 飼料用小麦の域内需給が大幅に緩和し、 
我が国に次ぐ世界第2位の飼料穀物輸入国である韓国との間に、 かなりの数量の
輸出契約を成約させたと言われている。 


東南アジア諸国の経済危機も影響か

 また、 タイ、 マレーシア等の東南アジア諸国は、 高度経済成長に伴う国民所得
の上昇により畜産物の需要がさらに増加すると期待されていたが、 今夏以来、 通
貨不安に端を発した深刻な経済危機に見舞われた。 これらの諸国の経済不況が長
期化した場合には、 国民所得が伸び悩むと同時に輸入品の価格が上昇し、 畜産物
および飼料穀物への需要が大幅に減退すると懸念されている。 既に、 USDAは、 マ
レーシア、 インドネシアおよびフィリピンの3カ国による本年度のトウモロコシ
輸入が、 合計で約80万トン減少 (前年比18%減に相当) すると予測している。 


中長期的にはタイトな国際需給を予測 (FAPRI)

 一方、 米国の著名な研究機関は、 飼料穀物の国際需給が、 中長期的にはタイト
に推移すると見込んでいる。 11月中旬、 熊本県で開催された 「畜産振興国際シ
ンポジウム」 で、 米国アイオワ州立大学の食糧農業政策調査研究所 (FAPRI)の関
係者は、 今後、 2006年にかけて、 飼料穀物の国際需要の拡大により、 トウモ
ロコシ輸出価格(米国FOB価格) がトン当たり107ドルから同127ドルへと徐
々に上昇するとの予測を公表した。 ただし、 当該予測は、 米国の96年農業法に
よる作付制限の撤廃、 EUの CAP再改革の行方、 次期農業交渉 (99年開始) の行
方など、 いくつかの重要な要因を考慮しているものの、 最近のアジア諸国の経済
危機の影響は組み入れていない。 アジア市場は世界の飼料穀物貿易に多大な影響
を及ぼすだけに、 その経済の動向が懸念されるところである。 



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