EUの豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○デンマークの豚肉輸出が増加



97年1〜8月の輸出量は前年同期比12. 1%増

 EU最大の豚肉輸出国であるデンマークの97年1月〜8月の輸出量は、 域内・
域外向けともに順調に増加し、 前年同期比12.2%増の94万トン (製品重量
ベース。 生体、 調製品等を含む。 ) となった。 

 そのうち、 同国の輸出量の6割以上を占める域内向けは、 最大の輸出先のドイ
ツ向けが18.8%増の21万9千トンと大幅な増加となり、 EUの主要な豚肉生
産国であるフランスやイタリアに対する輸出もそれぞれ12. 7%、 2. 8%
の増加となった。 

 一方、 域外向けでは、 最大のシェアを占める日本向けが5.1%増の13万2
千トンとなったほか、 近年、 国内の畜産業の不振が報告されているロシア向けが
17. 1%、 97年7月に豚肉の輸入を自由化した韓国向けが22. 3%の増
加となるなど、 軒並み増加となった。 

デンマークの豚肉輸出量(1月〜8月)

  資料:デンマーク豚肉輸出機構連合(DS:同国のと畜組合の上部団体)報告
  注1:製品重量ベース
    2:生体、調製品等を含む


域内の豚コレラの動向と日本向け輸出の回復が主因

 デンマークの豚肉輸出が順調に増加してきた原因は、 域内向けでは、 EU有数の
輸出国 (生体豚では最大) であるオランダや、 EU第2位の生産国であるスペイン
などで豚コレラの影響が長期化したため、 清浄国である同国に引き合いが集中し
たことが大きい。 

 特に、 EU最大の豚肉生産・消費国であるドイツ向けは、 同国が夏場の豚肉需要
が好調であったため、 オランダに代わる供給元としてデンマークから生体豚 (子
豚を含む) を中心に輸入を行なった。 イギリスの食肉家畜委員会(MLC) によれば、 
デンマークからドイツへの生体豚輸出 (頭数ベース) は、 1月〜8月で既に昨年
の通年実績 (69万5千頭) を上回っており、 97年の総輸出頭数は、 100万
頭以上に達する見込みである。 

 また、 域外向けでは、 96年下半期以降急減していた日本向けが、 97年3月
の台湾での口蹄疫発生による代替需要と、 7月のセーフガード (SG) 解除などに
より急速に回復し、 さらにロシアおよび韓国向けが大幅に増加したことも一因と
なった。 なお、 現地業界紙によれば、 97年のデンマークの日本向け輸出量は、 
過去最大であった92年の実績 (16万6千トン) を上回ると予測している。 


今後、 新たな輸出市場の開拓へ

 しかしながら、 今後、 デンマークの域内向けの豚肉輸出は、 厳しい状況が予想
される。 EUの97年8月期センサスでは、 オランダを除き、 ドイツ、 スペイン、 
フランスなど主要国の繁殖用雌豚頭数が、 押し並べて増加しており、 肉豚供給が
引き続き増加傾向にあることが明らかになった。 また、 オランダでも豚コレラの
発生がピークを過ぎ、 一部の生体豚の移動制限区域が解除され、 域内向けの輸出
が可能となった。 

 こうした中で、 デンマークの業界関係者は、 今後、 同国は新たな輸出市場とし
てフィリピンなどのアジア市場を開拓していきたいとしている。 また、 アフリカ
市場も潜在的に輸入需要があるとして注目しており、 輸出市場を多角化すること
で、 より長期的なマーケティング戦略にも乗り出そうとしている。 



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