特別レポート 

中国の食肉産業の現状と将来見通し (第11回世界食肉会議より)

企画情報部



 既報の第11回大会 (北京市:97年9月23〜25日) の全体報告に引き続
き、 テーマ別の事項として、 主催国中国の畜産政策、 食肉産業の動向等に関する
キーパーソンの講演について触れることとしたい。 

中国の畜産業の発展:その現状と将来見通し


 中国農産部 (農林水産省に相当) 副部長の斉景発氏は、  「中国の畜産業の発展:
その現状と見通し」 と題する講演の中で、 先ず、 農業と畜産の動向について触れ、 
農業全体における畜産の位置づけや、 生産量では既に世界的水準に達した食肉部
門の現状を中心に、 次のとおり説明した。 


1. 中国は常に農業発展を重視

 中国は大農業国で、 政府は常に農業の発展を重視してきた。 新中国の樹立 (1
949年) から約半世紀、 特に改革・開放に着手して以来の我々のたゆまぬ努力
によって、 中国は、 世界の耕作可能な土地のわずか7%で世界の人口の22%を
養っており、 世界の注目を集めてきた。 96年には、 穀物を4億9,000万ト
ン (一部イモ、 豆類を含む) 、 食肉を5, 915万トン、 水産物を3, 085
万トン生産した。 これは、 78年に比べてそれぞれ60.7%、 593%、 56
3%増加している。 穀物、 綿花、 食肉、 卵、 水産物などの主要農産物の生産量は、 
すべて世界の上位に躍り出ており、 かつ、 一人当たりの生産量においても、 世界
平均に届いているかあるいはそれを上回っている。 また、 96年の中国の農民の
一人当たりの純所得は1, 926元 (約29, 000円) で、 物価水準を考慮
して比較すると、 78年の4倍以上となっている。 現在では、 農民は、 生きてい
くのがやっとという生活に代わって、 もっと快適な生活を望めるようになってい
る。 

2. 畜産業は地方経済で重要な役割

 畜産業は、 中国の農業の重要な一部として、 地方経済でますます重要な役割を
果たすようになっている。 96年、 畜産業の生産額は農業総生産額の31.4%
を占めた。 これは改革直後の数年間に比べて16ポイント増加している。 四川省
や山東省などの主要家畜生産地では、 この数字が40%以上に跳ね上がり、 中に
は50%を超えている地域も数多くある。 現在、 中国の畜産業は約7,000万
人を雇用している。 畜産業は農民にとって重要な増収源となっており、 四川省な
どの農民の場合、 所得増加の60%以上が畜産によるものである。 畜産業はまた、 
大量の穀物とその副産物を畜産物に変換しており、 耕作と畜産の最適の組み合わ
せおよび農業の垂直的な結合に貢献している。 

 過去を振り返ってみると、 中国の畜産業は、 農業全般と同様に非常に曲がりく
ねった道筋をたどって発展してきた。 78年、 中国の食肉と乳製品の生産量は、 
それぞれ、 わずか856万3, 000トンと97万1, 000トンに過ぎなか
った。 また、 豚の総数は3億129万頭で、 羊と山羊が1億6,944万頭、 牛
が7, 072万4, 000頭であった。 

3. 改革・開放政策でさらに発展

 78年以降の18年間、 中国は改革・開放政策を採用し、 畜産業の発展を支え
るための一連の政策手段を講じてきた。 その結果、 中国の畜産業は、 歴史的な発
展の機会を得ることになり、 多大の進歩を成し遂げてきた。 

 (1) 畜産物の生産量は急速に増加し続けている。 96年、 中国の全食肉生産量
      は5, 915万トンに達し、 年率11. 3%で増加している;卵の生産
      量は1, 954万トンで年率13. 5%で増加している;生乳の生産量
      は736万トンで年率11. 9%で増加している。 

 (2) 畜産物の生産比率が改善された。 畜産物に占める食肉の割合は80年の7
      5. 2%から96年の68. 7%へと減少し、 卵は同じ期間に16.2
      %から22.7%へと増加した。 食肉部門では、 豚肉の割合が80年の9
      4%から96年の68. 3%へと減少したのに対して、 家きん肉は18. 
      2%に、 牛肉と羊肉はそれぞれ8. 4%と4. 1%に増加した。 畜産物
      の生産比率のこのような調整は、 中国の畜産業が飼料としての穀物への依
      存度を減らし、 したがって中国の資源基盤に適した畜産の発展の道を切り
      開くのに役立った。 

 (3) 畜産物の一人当たり供給量が急速に増加した。 80年、 中国の一人当たり
      の食肉の量は12. 3kg、 卵は2. 6kg、 乳製品は1.4kgであったが、 
      96年にはそれぞれ49. 5kg、 16. 0kg、 6.1kgに増加している。 
      現在、 中国の一人当たり食肉供給量は世界平均を10kg強上回っており、 
      中でも豚肉は世界平均の2倍、 また、 卵は先進国と同じレベルになってい
      る。 

 (4) 中国の畜産業は、 世界の畜産業にかなりの貢献をしてきた。 90年、 中国
      は世界第一の食肉生産国になった。 なお、 家きん肉では、 85年から世界
      のトップに立っている。 FAO の統計によると、 95年には、 中国の食肉生
      産量は世界の総生産量の25.7%を占め、 中でも豚肉は45%以上とな
      っている。 また、 卵では世界の総生産量の40%を占めていた。 現在、 中
      国は食肉と卵の生産量が最も急速に増加している国となっている。 

4. 畜産業の発展を促進するために努力

  中国の畜産業の発展をさらに促進するために、 我々は次のような努力を続けて
きた。 

 (1) 改良品種の普及

 現在、 中国には、 国、 省、 県、 郷鎮のレベルに1,700カ所以上の改良品種
普及所があり、 それらが協力して、 家畜繁殖技術の普及に関するネットワークを
形成している。 改良された家畜と家きんの品種が多数開発されている。 その中に
は次のようなものがある:中国メリノ羊、 中国ブラック・アンド・ホワイト牛、 
三江白豚、 湖北白豚、 北京白鶏、 草原紅牛、 新疆細毛羊。 その一方で、 外国の家
畜と家きんの優良種の輸入にも関心が払われてきた。 現在、 中国では、 50億頭
/羽の改良種の家畜と家きんが飼育されており、 豚の87%、 牛の35%、 羊と
山羊の60%、 採卵鶏の70%、 ブロイラーのほとんどすべてが改良種である。 
 
 (2) 配合飼料等の普及

 中国は80年代に飼料産業を立ち上げ、 10年以上かけて世界第二位の飼料生
産国になった。 96年、 中国は5,100万トンの配混合飼料を生産した。 また、 
濃厚飼料は380万トン、 添加剤の入った混合飼料は75万トンで、 総生産高は
1,070億元であった。 現在、 豚の飼料の30%、 ブロイラーの飼料の75%、 
採卵鶏の飼料の55%が工業生産された飼料である。 

 (3) 飼料資源の開発と利用

 中国では毎年、 約1,500万トンの (油糧) 種子のかす類、 2,500万ト
ンのふすま、 4,000万トンの酒かす類、 5億トンの作物の茎葉、 および家畜
と家きんのと畜場や他産業から出る多量の副産物が飼料として利用されている。 
現在、  (油糧) 種子のかす類、 ふすま、 酒かす類はほとんど100%、 作物の茎
葉は30%が利用されている。 92年以来、 中国は農耕地帯で作物の茎葉を利用
した家畜モデルプロジェクトを展開している。 96年までに、 208地区が国家
支援のモデル区、 184地区が地方支援のモデル区に指定されている。 96年に
は、 全部で3, 000万トンのアンモニア処理を受けた茎葉と8, 300万ト
ンのサイレージが利用された。 これらのモデル区を中心として、 中部牛肉ベルト、 
北東牛肉ベルト、 南部牛肉ベルトという3つの肉牛飼育地帯が出現しており、 中
国の牛肉の大半を生産している。 過去10余年の間に、 中国は北部の草原地帯と
南部の丘や傾斜地の開発と利用にも努めてきた。 現在まで、 約2,000万ムー 
(1ムー=0. 07ha) が開発されている。 95年には、 全土で2億1,000
万ムーの草地を開発して改良し、 1億2,000万ムーの牧草地を囲い込み、 5
28万ムーの飼料用種子栽培地を開発した。 

 (4) 家畜衛生業務の改善

 一方では、 家畜の疾病を管理下に置くための努力がなされてきた。 中央から鎮 
(村) のレベルにいたるまで家畜衛生の管理機関が設立されており、村のレベルに
は防疫担当の作業員も配置されている。 なお、 このネットワーク全体で約100
万人を雇用している。 そのほか、 1, 800以上の動物用製薬工場があり、 2, 
000種類以上の生物/化学医薬品と300億回分の家畜・家きん用のワクチン
を生産している。 また一方では、 農場とと畜場での検疫業務の強化のための努力
がなされてきた。 その結果、 全国の家畜衛生業務を監視、 監督するネットワーク
ができている。 今年、 政府は、 家畜衛生と検疫に関する中華人民共和国で最初の
法律を公布した。 この法律は1998年1月1日に発効する。 

 (5) 生産形態の改善

 改革・開放以来、 畜産業全体の質の向上を目的として、 小規模な世帯単位の飼
育を行う一方、 大規模な家畜生産と統合された業務運営が進められてきた。 現在、 
豚の13. 6%は飼育頭数が50頭超の豚農場から、 ブロイラーの24. 2%
は飼育羽数が1, 000羽超の養鶏場から、 採卵鶏の40%は飼育羽数が10, 
000羽以上の養鶏場から出荷されている。 特に、  「畜産物製造企業」 や 「企業
と農家の結合」 といったタイプの操業形態が、 生産、 加工、 販売を一貫した産業
連鎖に結びつけ、 畜産業の利益を向上させている。 これらの形態は、 何万戸もの
小規模な農家を、 常に変化する市場にリンクさせ、 それによって畜産業の競争力
を高めている。 これらの形態はまた、 ばらばらになっている家畜生産者を集結さ
せてもっと大きなグループに結びつけ、 大規模な家畜生産を可能にしている。 

 (6) 畜産物の流通システムの改革

 78年以来、 中国は、 一方で生産請負契約制度を取り入れながら、 畜産物の流
通システムの改革にも取り組んできた。 これは、 複数の経済部門、 複数の流通経
路の共存を可能にし、 国、 産業共同体、 個人が家畜の生産計画を立てるのを促進
するものである。 これらの方策は、 畜産業の商業的な側面における発展を大いに
助長してきた。 

5. 畜産業の将来に自信

 次に、 同副部長は、 肉畜・食肉部門の現状を踏まえて、 それらの部門を中心に
今後の畜産の発展の方向づけおよび目標や課題について、 次のとおり述べた。 

 我々は、 中国の畜産業の将来に十分な自信をもっている。 2000年までに年
間の食肉生産量を6, 800万トン、 卵生産量を2, 200万トン、 生乳生産
量を1,000万トンにするという我々の目標は達成されるはずである。 これら
の数字は1人当たり供給量に直すと、 それぞれ、 53kg、 17kg、 8kgになる。 
我々は、 2010年までに、 人口増加、 生活水準の向上、 経済の成長によるニー
ズの変化に応えるために、 食肉、 卵、 生乳の生産がかなり増大すると予想してい
る。 そのため、 我々は次の方策を講じる予定である。 

 (1) 飼料資源の開発のスピードアップ

 合理的な方法での飼料資源の開発と利用を続ける。 一方では、 未加工の穀物を
直接飼料として利用するのを減らし、 飼料としての穀物の消費効率を改善するた
めに飼料産業の発展を目的とした政策の展開を速める。 もう一方では、 作物の茎
葉や種子の粗びき粉などを含む飼料資源を開発し、 北部において草地を拡大し、 
また、 南部の丘や傾斜地と冬期の休耕地の利用拡大のためにもっと努力する。 

 (2) 畜産物の市場システムの強化

 我々は、 さまざまな地域の家畜の生産、 消費、 輸送などの要素を考慮に入れな
がら、 市場の発展を促進する。 都市部の市場の発達に配慮していくほかに、 主要
な家畜生産地に生態家畜 (繁殖用や素畜を含む) と一次加工畜産物のための卸売
市場を創設する。 主要消費地にも、 さまざまな形態とさまざまなレベルの畜産物
卸売市場を創設する。 その一方で、 生産者、 流通業者、 消費者に正確な市場情報
を提供し、 かつ、 政府にマクロ管理策定に必要な情報を提供するために、 市場情
報システムの開発にも注意を払う。 

 (3) 家畜の衛生と検疫に関する法律の施行

 現場での分析と診断の器具と設備の改善に焦点を当てた疾病報告制度を創設す
る。 動物用製薬工場では技術革新をおこない、 新しいワクチンを開発し、 また、 
ワクチンの質を改良する。 家畜の購入とと畜の際の検疫を重視し、 かつ、 国際規
範に沿って動物用医薬品管理システムを確立し、 病気の拡散防止措置を向上せし
めて、 家畜衛生・検疫業務の後進性を一掃する。 

 (4) 科学技術を応用した畜産業の継続的な発展

 優先分野は、 先端技術に関する研究、 先端的な応用技術の広範な利用、 繁殖ネ
ットワークの改善、 科学技術の領域の国際的な交流と協力、 外国の進んだ農業技
術の導入、 畜産業への科学技術面における貢献の改善である。 


中国の食肉市場の特徴と将来見通し


 また、 中国国内貿易部 (国内通産省に相当) 副部長の何済海氏は、  「中国の食
肉市場の特徴と将来見通し」 と題する講演の中で、 先ず、 70年代から現在に至
るまでの食肉生産と消費動向の変化および食肉市場の安定化等について、 次のと
おり説明した。 


1. 中国の食肉市場の発展の概観

 (1) 増加の一途をたどる食肉の総生産量

 96年の全国の食肉の総生産量は5,800万トン (*) で、 これは、 18年
連続で生産が増加し、 1978年の生産量の5倍以上になったことを意味してい
る。 中国では、 食肉の1人当たりの年間消費量は47. 4kgである。 
 (*概数で述べられたもの) 

 (2) 食肉の構成の変化

 総生産量のうち、 豚肉の割合がかなり減少し、 牛肉・羊肉と家きん肉の割合が
次第に増加している。 統計によると、 豚肉の割合が90% (70年代) から70
% (現在) まで減少したのに対して、 他の食肉の割合が増加し続けている。 

 (3) 生産と販売の地域構成の変化

 中国の東北部 (遼寧、 吉林、 黒龍江の3省) は、 かつては豚肉の主要消費市場
であった。 しかしながら近年は食糧生産の増加と共に豚肉の生産が急速に増加し
ており、 現在では、 北東地域では豚肉は基本的に自給できるまでになっている。 
一方、 地方経済の発達、 特に地方企業の発達と共に、 農民が飼養している家畜と
家きんの頭羽数が減少するケースがあり、 それによって、 もとは生産地であった
海岸部が (急速な経済成長により) 消費地へと変化している。 

(4) 生産形態の変化

 中国は大農業国である。 地方部では、 家族単位の飼養が依然として家畜と家き
んの主要な供給ソースとなっている。 地方経済の監理制度の改革と自由化により、 
飼育規模を拡大させ、 安定した家族単位の飼育をもとにした複合的生産管理の発
達を促してきた。 特に近年は、  「野菜かご」 制度 (副食品の市長請負制度) の展
開にともなって家畜と家きんの生産の規模が大幅に拡大する中で、 同時に、 いく
つかの中都市や大都市で家畜と家きんの生産規模がかなり大きくなったために、 
自給率が飛躍的に高まっている。 

 85年以来、 中国政府は、 市場改革をおこなって食肉の流通システムを改善し
てきた。 これは、 政府管理、 管理と自由化の組み合わせ、 完全な自由化という流
れをもったプロセスである。 市場流通においては、 食肉の価格と市場運営面が自
由化されている。 国内貿易部は、 社会的な必需品の流通を管理しており、 食肉流
通の面では、 主として安定した生産と販売および食肉の供給と需要のバランスを
担当している。 さらに、 購入、 加工、 貯蔵、 輸送、 卸売、 小売などの市場流通連
鎖の各部分の指導もおこなっている。 なお、 地方政府においても、  (中央の各部
門に) 対応する部門が、 地方における食肉の流通を担当している。 

 豚・豚肉の市場自由化の後、 全国の食品会社の購入と販売の経路は、 卸売市場
の創設及び卸売/小売と生産/販売を結びつける市場管理システムの開発という
一連の方策によって整備され、 発達が推し進められている。 国内貿易部は、 市場
システムを整備するために、 さまざまな経済構造の企業の競争を奨励しており、 
食肉資源の管理という基本的な役割を果たしている。 

 また、 食肉の流通を自由化する一方、 食肉の品質を高め、 生産者と消費者の利
益を守るために、 家畜と家きんについては、 指定されたと畜場や食肉加工工場で
と畜したり加工したりしなければならないという規則が設けられた。 

2. 食肉の生産と販売を安定化させるための中国政府の主要な政策

 食肉の流通と市場を管理する主要な政策は次の通りである。 

 (1) 食肉・家きん肉の生産と販売の結合の促進

 生産、 加工、 流通の有機的な結合は、 最近の中国の食肉流通システムの改革の
重要な項目である。 多くの国営食品企業は、 大規模な食肉と家きん肉の生産基地
を作り、 食肉の生産と加工産業を発展させ、 最終的に製品がきちんと消費者に届
くようにしている。 この市場連鎖は流通上の関連コストを引き下げ、 生産と販売
の間の相互補完を実現している。 このような生産と販売の結合は、 すべて、 長年
にわたる開発を通してますます促進されてきている。 その中には繁殖豚の生産に
焦点を合わせているものもあるし、 また、 豚の肥育に焦点を合わせているものも
ある。 また、 生産と販売の合併企業を通して、 農民に一連のサービスを提供する
ことに焦点を合わせているものもある。 この 「農民と連携した会社」 方式によっ
て、  (家族的経営により) 分散している豚の飼養が組織化されている。 

 (2) 保証基金と食肉製品の2段階の備蓄システムの設定と整備

 豚肉などの備蓄システムが機能している。 これらは市場の機能および需要と供
給のバランスを調整している。 また同時に、 市場条件の変化にともなって食肉備
蓄のパターンが変わってきている。 一定の豚の冷凍枝肉は別として、 国内貿易部
は、 豚肉などのカット肉の貯蔵および生体豚の 「※貯蔵」 を増やしている。 主食
でない食品の保証基金は、 主として食肉や野菜などへの補助金および生産基盤の
確立の支援に使われている。 食肉備蓄と、 前述の保証基金が有効に使われている
ので、 食肉の生産と市況は安定している。 

 (注) ※養豚経営体での出荷調整を指す。 

 (3) 食肉卸売市場の整備

 卸売市場は食肉流通連鎖の重要な構成要素である。 90年代初め、 国内貿易部
は地方政府と協力して、 成都と上海の2カ所に中央卸売市場を設けた。 その一方
で、 地方の卸売市場が北京、 無錫、 瀋陽、 その他に次々にでてきている。 また、 
地方の市場でも取引が活発になる傾向がある。 現在、 国と地方の卸売市場は、 両
方とも管理基準に合ったものが増えてきている。 組織化の度合いは次第に向上し
ており、 市場管理と販売の新しいパターンも出現している。 また、 市場管理は大
雑把な管理から、 集中的な管理へと変化してきている。 現在では、 市場における
需要と供給による価格決定メカニズムが機能している。 

 (4) 製品構成の調整の促進

 市場の消費傾向に合わせるために、 国内貿易部は、 と畜と加工における技術革
新を加速化させ、 技術投資を増やし、 かつ、 技術の優秀度に応じた食肉の加工度
向上という取り組みを発展させ、 企業が中国風と西洋風のさまざまなグレードの、 
良質で、 高栄養で、 低脂肪で、 軽便な包装の、 生鮮と調理済みの食肉製品を生産
するように指導している。 現在、 中国の市場にはさまざまな水準とグレードの急
速冷凍食品が豊かに出回っている。  「シャンフイ」 や 「チュンドゥ」 などの有名
ブランドも出現している。 食肉製品は健康と簡便さというフレーズを合言葉に進
化している。 

 (5) 食肉製品の監視システムの確立の整備

 近年、 政府と関係省庁は、 特に食肉製品の情報ネットワークの確立に投資を振
り向けている。 地方の流通当局と食品会社はそれに対応した情報統計機関を設立
し、 専門の職員を置いている。 いくつかの大都市や中都市では、 価格調整システ
ムの下での事前通告制度が設けられている。 いくつかの卸売市場と会社も、 市場
の現状に遅れないようにし、 市場ニーズを反映させるために、 特別の市場モニタ
ー組織を設けている。 これは、 生産と販売の科学的な予測にとって不可欠である。 

 (6) 流通秩序の強化と市場行動の標準化

 近年、 中国は、 家畜の予防接種、 食肉の品質検査、 家畜・家きんのと畜、 市場
競争のそれぞれを対象とした法律、 政令、 規則を制定した。 これは食肉の品質を
保証し、 流通秩序を良い方向に仕向けることを促すためのものである。 食肉の生
産、 流通、 消費の法的な保証は、 市場の正当な運営と公平な競争を一般化する。 
指定工場での家畜と家きんのと畜は、 近代化された工場でのと畜の促進にはずみ
をつける。 これは、 食肉消費者に安全を保証し、 環境の保護および国家の税収を
増やすために有益である。 

 (7) 外部支援経済の発展の促進と開放政策の遵守

 外国資本の流通とその効果的な利用は、 資本不足を緩和する方策の1つであり、 
外国の先端的な技術と経営ノウハウを学びとる主要な経路であり、 国際市場への
結びつきを促進する。 経済改革以来、 中国の食肉産業は常に外国投資の主要な対
象分野であったし、 この分野では外国資本の利用水準が高まっている。 現在、 全
国に約1,000の合併会社や独立外国資本の会社が存在している。 また、 協力
プロジェクトは2, 000件に達し、 登録輸出業者は200社を超えている。 

 次に、 同副部長は、 中国の食肉市場の将来見通しについて、 消費形態の変化へ
の適合や品質向上への取り組みおよび生産・流通の近代化や外資導入の重要性等
を踏まえて、 次のとおり強調した。 

3. 中国の食肉市場の将来見通し

 中国は12億の人口を抱えた発展途上国であり、 食肉の消費レベルを向上させ
る必要がある。 この先5〜10年間においては、 中国の食肉消費の年間増加率は
10%以上になると予測されている。 地方部の人口は非常に多い。 生活水準がま
すます向上していることは、 食肉消費やその他の需要が増大する可能性があるこ
とを示している。 また、 都市部の食肉消費の増加は、 消費パターンを変化させ、 
高品質の食肉が求められるようになっている。 従来の市場における主力商品であ
った冷凍枝肉は、 部分肉、 調理済みの食肉、 少量包装の食肉などのさまざまな種
類の食肉製品の取って代わられている。 こうしたことはすべて、 中国の食肉市場
の大きな可能性と将来見通しが明るいことを示唆している。 

 流通量が十分で、 需要と供給の均衡によって価格が安定している市場は、 完全
な政策、 規制システム、 標準化された市場運営と指導に基づく業界の発展を基盤
として確立することができる。 そうすれば、 食肉の生産と販売は確実に、 急速に、 
健全に発展する。 

 (結論的には) 

・家畜と家きんの生産基地の創設を推進し、 それらの生産と販売の結合を完成さ
  せる。 

   進んだ技術を取り入れて家畜と家禽の種を改良すると共に、 繁殖と育成部門
  の家畜の生産を確保しなければならない。 同時に、 生産基地の創設を強化し、 
  投資を増やし、 飼育設備と必要な付帯設備の設置を支援し、 基地施設を一新し
  なければならない。 また、 化学的な管理によって、 従来の世帯単位の飼育を集
  約的な工場飼育へと移行させる。 

・製品構成を最適化し、 製品の質を高める。 

   と畜、 加工、 冷凍、 輸送への技術投資を増やさなければならない。 輸出には
  製品のグレード、 規格、 技術内容、 付加価値を高める必要があるが、 そのため
  に食肉の加工度を高め、 洗練された加工をする。 消費と流通の指針にしたがっ
  て冷蔵食肉の生産を大幅に進展させ、 消費人口を拡大しなければならない。 そ
  れが、 消費者に健康的で簡便な食肉製品を提供することになる。 

・食肉流通部門の指導とサービスを強化し、 大規模経営の外部支援経済の食品会
  社を支援する。 

   食肉産業を活性化させて指導するための方針を決め、 食肉市場に対する政府
  の規制を完全なものにするのは流通部門の責任である。 その一方で、 協力する
  会社とサービス提供グループおよび合併会社の発達を促すために、 食品会社の
  設立を奨励しかつ支援する。 これが国境を超えた強力な会社を支えることにな
  る。 



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