豚の総飼養頭数削減法案を発表 (オランダ)




2000年までに25%削減

 オランダ政府は、 豚コレラがピーク後も依然として発生している中で、 11月
17日、 同国の豚の総飼養頭数 (97年8月期センサスでは、 殺処分などによる
豚コレラ撲滅対策が取られていることから、 1,169万6千頭) を25%削減
する法案を取りまとめた。 

 同法案は、 飼養頭数の削減を2段階に分けて実施するとしており、 各地域の養
豚農家は、 まず、 96年の飼養頭数を基準として、 98年までに15%の頭数削
減を行い、 次に、 2000年までに残りの10%を削減する (最終的な総飼養頭
数規模を約1千80万頭にする) としている。 


過密飼養の緩和が目的

 この法案がまとめられた背景には、 現在、 オランダにおける豚の過密飼養が、 
家畜衛生や動物愛護、 環境対策といった分野で問題にされているとの共通認識が
あり、 当該法案にはこれら諸問題を解消しようとする狙いが込められている。 特
に、 ノースブラバント州などの特定地域において豚が過密飼養されていたことが、 
今回の豚コレラのまん延につながったとみられている。 

 また、 この法案は、 主として疾病のまん延防止のため、 豚の飼養頭数の削減を
目的として作られたものであるが、 動物愛護を推進するための豚の飼養管理に関
する法律の改正など、 幅広い内容も盛り込まれている。 このため、 この法案では、 
同法に基づく豚の飼養管理や環境対策の取組みに大きな改善が見られた農家に対
しては、 飼養頭数の削減率を緩和する規定が設けられている。 

 なお、 オランダ政府は、 飼養頭数の削減を行なった農家に対する補償などに4
億7千5百万ギルダー (約290億円) の支出を見込んでいる一方で、 今後も現
在の豚の飼養頭数を維持する農家に対しては、 その飼養頭数に応じて賦課金を課
すことを予定している。 なお、 同賦課金は、 豚コレラなどの疾病対策のための政
府の施策資金に充当することとしている。 


生産者団体などは強く反対

 しかしながら、 今回の法案が養豚経営に大きな打撃を与えるとみたオランダの
生産者団体 (LTO) および家畜・食肉団体 (PVA) は、 これに強く反対しており、 
共同で次のような代替案を提示した。 

 これによると、 生産者は、 自らの競争力が急激に低下しないよう、 2010年
までに15%の飼養頭数削減を行なうこととしている。 また、 彼らは、 その代替
案の中で、 政府は豚の頭数削減という直接的な手段よりも、 環境対策の一層の充
実や養豚農家の衛生基準の向上など、 間接的な手段に力を入れるべきであると主
張している。 したがって、 今回の法案は、 成立までには、 なお紆余曲折を経るこ
とが予想されている。 



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