EU委員会、 子牛の早期と畜制度の現状維持を要求 (EU)




制度の運営状況報告書を農相理事会に提出

 EU委員会は、 このほど、 子牛のと畜を促進し将来の牛肉生産の抑制を図ること
を目的として実施している、 早期販売奨励金制度(EMP) および早期処分奨励金制
度(CPP) の運営状況報告書を農相理事会に提出した。 加盟国は、 96年3月の牛
海綿状脳症(BSE) 問題の発生による域内の牛肉過剰在庫対策として、 96年12
月から2年間、 両制度のいずれかあるいはその両方を実施しなければならないこ
ととされている。 


EMP、 トータルで節約コストが運営コスト上回る

 EMP は、 加盟国ごとに定めた上限体重以下で子牛をと畜した場合に奨励金を交
付する制度で、 96年10月末に新たな過剰在庫対策として創設された。 1頭当
たりの奨励金単価は、 現在、 各国のと畜体重別に50エキュー (約6千7百円) 
から65エキュー (同8千7百円) の間に設定されているが、 98年からは一律
50エキューとなる。  EMPは、 イギリス、 ポルトガル、 アイルランドを除く加盟
国が採用しており、 その実施以来、 97年7月までに90万頭がその対象となっ
ている。 また、 その内訳はオランダ、 フランス、 イタリアで6割を占めている。 

 今回の報告書によると、97年のEMP対象頭数は、 推定140万頭であり、 当該
制度の運営コストは9千万エキュー (同120億円) になるとされている。 一方、 
将来、 介入買い上げをせずに済むことにより節約されるコストは8千7百万エキ
ュー (同117億円) になると評価している。 また、 98年の対象頭数は、 同1
60万頭となり、 運営コストは1億エキュー (同134億円) 、 節約コストは1
億1千万エキュー (同147億円) になると評価している。 したがって、 2年間
で節約コストが若干運営コストを上回ることになる。 なお、 同報告書は、 その対
象頭数の約4割が、 この制度が無くても同様の体重で処分された牛、 すなわち、 
奨励金を 「ただ食い」 した牛であったと推定している。 


CPPは大幅なコスト節約に

 一方、 CPP は、 乳用雄子牛を生後10日以内にと畜した場合に奨励金を交付す
る制度で、 92年の共通農業政策(CAP) 改革で設置された。 その後、 96年10
月末には、 肉用雄子牛にもその制度を適用することとなった。 現在、 1頭当たり
の奨励金単価は、 乳用雄子牛が115エキュー (同1万5千円) 、 肉用雄子牛が
145エキュー (同1万9千円) となっている。 CPPは、 イギリス、 ポルトガル、 
アイルランド、 フランスが採用しており、 97年7月までで60万頭がその対象
となっている。 その内訳は、 イギリスとフランスで9割を占めている。 

 今回の報告書では、 97年の CPP対象頭数は90万頭と推定されており、 当該
制度の運営コストが1億1千万エキュー (147億円) であるのに対して、 介入
買い上げの回避で節約できるコストが5億6千万エキュー (750億円) と見込
まれている。 


EU委員会、 制度の維持を求める

 当該報告書は、 EMPについては、 最近、 子牛肉市場が堅調であることから、2年
間で費用節減効果は上がるとし、 その継続を求めている。 ただし、 必要に応じて
来年も処分時体重別の奨励金の再導入の必要性も付け加えている。 また、CPPにつ
いては、 その費用節減効果は一目瞭然であり、 将来的な牛肉生産の減少に大きな
効果を持つとして、 やはり、 現状維持を求めている。



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