食肉検査制度改革が難航 (豪州)




業界からの要請により食肉検査制度の改革を推進

 豪州では、 現在、 輸出用食肉の衛生検査は、 連邦政府 (豪州検疫検査局:AQIS) 
の所管であるが、 そのコストは全て受益者負担となっている。 このため、 食肉業
界からは、 検査コストの負担が重く、 国際競争力を阻害しているとの批判が従来
から絶えず、 政府は、 この批判に応える形で、 昨年来、 食肉検査制度の改革を推
進してきた。 

 改革の骨子は、 1) HACCP方式による検査システムの構築、 2) その上で、AQISの
指導・監督の下、 従来のAQIS検査官に代わり、 各企業 (パッカー) 職員が食肉検
査を行うというものである。 

 現在、 輸出食肉検査を企業独自の検査に移行させるための試行プロジェクトが
進められているが、 今年3月、 連邦政府は、 米国農務省に対し、 この試行プロジ
ェクト参加プラントで製造される食肉を、 政府検査を受けたものと同等のものと
して輸入を承認するよう要請していた。 


米国が豪州政府の提案を拒否

 しかし、 先頃、 米国農務省は、 この方式では、 政府の 「監視」 が極端に弱まり、 
安全性への信頼性が確保されないとして、 受け入れられない旨を書面で公式に回
答した。 

 このため、 豪州にとって、 食肉の最大の輸出先の1つであり、 また、 輸入承認
をとりつける上で最難関と考えられる米国の拒絶により、 食肉検査制度の改革は、 
その実現が極めて危ぶまれる状況となった。 

 この背景には、 HACCP 導入は是としても、 最終的な衛生検査結果の良否の判断
を、 政府でなく、 利害の当事者が下すことは、 検査の公正・中立性という点で疑
問であるとの判断があったと思われる。 


今後の豪州政府の対応に注目

 一方、 アンダーソン第一次産業大臣は97年7〜8月に訪米・訪日し、 グリッ
クマン農務長官等と会談した際、 食肉検査制度改革に理解を求めるなど、 改革に
積極的に取り組んできた。 また、 今年、 5年振りにAQISの食肉検査料が大幅に引
き上げられたが、 その際にも大臣は、 制度改革により、 近い将来、 コストは大幅
に削減されるとして業界を説得するなど、 改革の実現に自信満々であった。 今回
の米国の拒否により、 業界の政府批判が強まるのは必至であり、 今後、 大臣が制
度改革にどのように対処していくか注目される。 



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