◇絵でみる需給動向◇
豪州の東南アジアへの生体牛輸出が依然として低迷しつづけている。豪州食肉 畜産公社(AMLC)の発表によると、98年1〜4月の東南アジア向け輸出頭 数は7万1千頭となり、前年同期比68.4%減と3分の1以下に激減したこと になる。97年の6月までは前年同月を上回り続けていたが、7月に入ってから 伸びが鈍化し、8月以降はほぼ前年を下回っており、特に98年に入ってからは、 前年同月の3分の1ほどの水準で推移している。 ◇図:東南アジアへの月別生体牛輸出◇
豪州の生体牛輸出は、順調な経済成長を続けていた東南アジア向けを中心に増 加の一途をたどり、最盛期には豪州全体のと畜の1割に当たる頭数が生体牛とし て輸出されていたため、と畜加工分野での空洞化が懸念されるほどであった。し かし、97年7月のタイバーツ急落を皮切りに、主要な輸出先である東南アジア において経済危機が発生し、それに伴って同地域への生体牛輸出も大幅に減少し 始めた。なかでも、これまで最も有力な輸出先であったインドネシア向けの減少 が著しく、特に、98年に入ってからはほとんどゼロに近い状態である。 また、有望な仕向先とされていたリビアへの輸出も、このほど、牛海綿状脳症 (BSE)問題により同国向け生体牛輸出が禁止されていたアイルランドからの 輸出が再開されることで、豪州からの輸出は困難となるようである。これによっ て豪州の生体牛輸出は、さらなる痛手を被ることが予想される。 ◇生体牛仕向先別輸出動向(1〜4月)◇
このような状況の中で、さきごろ、豪州政府は、同国北部からの中国向け生体 牛輸出について、中国側と検疫手続きに合意した。ビクトリア州などの南部の輸 出港からは、既に中国向けの生体牛輸出が一部開始されていたが、この合意によ り、今後は、海上輸送などの面で大幅に有利とされ、生体牛輸出の中心基地とな ることが期待されている北部からの輸出が実現することとなる。中国では目覚し い経済成長に伴い牛肉需要が急増していることもあって、将来的には年間15万 頭水準の生体牛が中国に向けて輸出されるとの見込みもあり、このことが、低迷 を続けている同国の生体牛輸出にとって良い材料となることが期待されている。
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