◇絵でみる需給動向◇
タイブロイラー加工輸出業者協会が取りまとめた98年4月の鶏肉輸出動向(速 報)によると、冷凍鶏肉および鶏肉調製品の輸出数量は、前年同月比34%増の 2万トンとなり、第1四半期に続き大幅な増加となった。冷凍鶏肉は、同29% 増の1万5千トン、うち日本向けが昨年12月以降連続して増加し、同19%増 の1万トンとなった。中国、シンガポール、香港への輸出も増加し、アジア向け 全体では、同29%増の1万1千トンと大幅に増加した。また、EU向けも、ド イツ、イギリスの増加により、同24%増の3千6百トンと大幅に増加した。一 方、本年1月が前年同月比24%減となったため、第1四半期の輸出数量が前年 同期をわずかに下回った日本向けの鶏肉調製品は、同6%増の3千トンとなり、 2月以降、前年同月を上回って推移している。EU向けは、第1四半期に続き、 ドイツ、オランダ、イギリスへの輸出が大幅に増加し、前年同月の約5倍となっ た。
タイの鶏肉輸出業者によると、日本向けの輸出数量が増加した主な要因は、昨 年7月から始まった通貨バーツの下落により、日本向け冷凍鶏肉の輸出価格がト ン当たり1,600〜1,700USドルとかなり安価であり、かつ、バーツの先 行き不透明感もあって、日本の需要者が5〜6ヵ月先までの手当を大量に行った ためとみられている。しかし、最近、タイの鶏肉加工業者は、バーツ安による生 産コストの上昇分を、日本向け輸出価格に転嫁させていること、バーツの為替が USドルに対し回復していることなどから、輸出価格を中国、ブラジルなどの競争 相手国の輸出価格まで引き上げてきており、日本の需要者の意向を受けた輸出業 者の引き下げ交渉にもかかわらず、強気な姿勢を崩していない。 このため、タイの鶏肉輸出業者は、今後の日本向けの同輸出価格は、トン当た り2,000USドルが上限とみている。いずれにしても、為替の動向が輸出数量 の増減に大きく影響するとしている。 また、EU向け輸出の増加は、中国からの輸入禁止、需要の増加などの要因の 他に、一昨年までタイからEUへの輸出企業は、チャロン・ポカパン、サハ・フ ァームが中心であったが、最近は、サンバレー、ゴールデンポルトリーなどの企 業が、EUの衛生基準を満たした近代的な工場を設置し、輸出を増加させたこと も一因とみている。EU向け冷凍鶏肉の輸出価格は、昨年末に一時的な下落はあ ったものの、トン当たり2,500〜2,600USドルで、他の地域向に比べ高 価格で輸出されている。なお、輸出された冷凍鶏肉のほとんどは皮なし胸肉で、 その他にささみなどとなっている。 このような状況の中で、業界による98年の輸出見通しは、第1四半期のよう な5割に迫る大幅な伸びのは期待できないものの、前年比25%増と強気なもの となっている。
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