◇絵でみる需給動向◇
豪州酪農庁(ADC)によると、豪州の全粉乳生産量は、ここ数年間連続して 前年を上回って推移していたが、97/98年度の期首9ヶ月間(97年7月〜 98年3月)においては、前年度同期比7%減少し、11万2千トンとなってい る。 前年度同期比で、脱脂粉乳は0.4%と横ばい、バターとチーズはそれぞれ2. 5%、3.0%とやや増加しているのと比較して、全粉乳のみ、かなりの減少と なっている。 ◇図:乳製品生産量の前年比の推移◇ 乳製品の生産量の推移(各年度7月〜3月) 資料:ADC「Monthly Statistics」
全粉乳は、還元乳類の製造や菓子類、ヨーグルト、アイスクリームの製造用と して幅広い用途で使用され、東南アジア向けを中心に輸出が増加していた。また、 それに伴って豪州国内では全粉乳製造のための設備の増設・新設が相次いで進め られた。このため、96/97年度においては、他の乳製品が横ばいもしくはマ イナスとなっていたのに対し、全粉乳の生産量は前年度比20%増加という突出 して高い水準であった。よって、今回の減少はこの反動であるとも考えられ、実 際、今年度は一昨年度同期の10万1千トンと比較して11%も上回っており、 決して低い水準ではないともいえる。
全粉乳は生産量に占める輸出向けの割合が極めて高いのが特徴である。国内販 売が多いチーズが4割であるのに対して、全粉乳では、輸出が8割以上を占めて おり、輸出仕向を前提として生産されている製品であり、生産動向が海外の需給 事情に大きな影響を受けるといえる。そのため、昨年度のように輸出市場が好調 であれば、生産量増加となるが、今年度のように主要輸出市場における経済危機 の影響で、全粉乳の生産量も減少したと考えられる。
98年に入ってからの全粉乳生産量は、各月とも前年度をやや上回って推移し ている。豪州農業資源経済局(ABARE)の予測においても、アジアの経済危 機による全粉乳等の輸出の減少は一時的なものであるとしており、来年度以降は 前年度比で増加すると見込まれている。また、主要輸出相手国であるフィリピン やマレーシアなどが通貨危機から回復の兆しを見せており、このことも今後の豪 州の全粉乳の生産・輸出の増加に影響すると考えられる。 ◇図:全粉乳の月別生産量◇
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