◇絵でみる需給動向◇
EUの主要酪農国であるフランスのミルクボード(ONILAIT)からこの ほど、同国の乳業メーカーの現状に関するレポートが報告された。これによると、 97年のフランスにおける乳業メーカーの企業形態は、生乳の取扱シェアで民間 系が6割近くを占め、他のEU主要国と様相を異にしている。EUの乳業メーカ ーは、一般的に各国の農家が設立した協同組合系が大きな割合を占めており、オ ランダやドイツでは8割以上、デンマークやアイルランドではそのほとんどが協 同組合系である。
また、フランスでは乳業メーカー上位26社(92年は31社)が国内の24 0の工場で、同国の生乳生産量(2,290万トン:乳業メーカーへの出荷ベー ス)の8割以上を加工処理している。特に、かつてEU最大の乳業メーカーであ ったベニェール社、92年に国内第3位の乳業メーカーCLE社を買収したボン グラン社、協同組合系であるソディアル社の上位3社は国内で120の工場を有 し、4割以上(約1千万トン)の生乳を加工処理している。また、この上位3社 は、フランス国内の小売用クリームの6割以上、飲用牛乳およびバターの4割以 上を生産している。 しかし、この上位3社は、ヨーグルトやデザート類の部門では、全体の4分の 1しか生産しておらず、この分野では、国際的な大手食品メーカー、ダノン社や ネスレ社などが優位に立っている。また、チーズは、4割近くを生産しているも のの、硬質チーズの生産については、エントルモント社やベル社、その他多くの 中小乳業メーカーが大きなシェアを占めている。 なお、フランスの乳製品市場は、自国資本の企業が大きなシェアを握っており、 オランダの協同組合系企業で、昨年の合併によりEU最大の乳業メーカーとなっ たカンピナ社や、イギリス第2位の乳業メーカー、ユニゲート社など、EU各国 の大手乳業メーカーのシェアは小さい。一方、上位3社をはじめとするフランス の乳業メーカーは、他のEU諸国に積極的に進出している。 ◇図:上位3社による乳製品生産および生乳加工処理シェア◇
フランスにおいても、他のEU諸国と同じように、近年、乳業メーカーの再編 合理化が進んでいたが、ONILAITによれば、現在は、国内向け乳製品の販 売状況が全般的に好調であったことから、各メーカーの経営成績は良好で落ち着 いているとしている。 しかし、ONILAITでは、この状況は一時的なもので、スーパーマーケッ トなど流通サイドからの発言力が増してきていることや、共通農業政策(CAP) 改革案で乳製品の介入価格の引き下げが提示されるなど、市場環境が変化する中 で、乳業メーカー再編合理化のペースは今後加速し、民間系と協同組合系の合併 も進展するなど、その企業形態はより複雑化していくとみている。
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