EUの豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○価格低下を受け、輸出補助金の交付を再開



5月の豚枝肉卸売価格は前月を5.2%下回る

 EUの豚枝肉卸売価格(15カ国平均の市場参考価格、以下「豚肉価格」)は、
97年10月以降低下傾向をたどっている。98年5月は、前月を5.2%下回
る(オランダなどで発生した豚コレラにより価格がピークに達した前年同月と比
べると38.8%下回る)124.7ECU(約18,300円)/100kgと
なった(左図参照)。また、これを国別に見ると、各国とも軒並み下落しており、
EU最大の豚肉生産国であるドイツが前月を7.5%下回る126.4ECU(約
18,500円)/100kg、第2位の生産国であるスペインが5.4%下回る
132.7ECU(同19,400円)/100kg、オランダが8.8%下回る
103.5ECU(同15,200円)/100kgなどとなった。

◇図:主要国の豚枝肉卸売価格(市場参考価格)◇


域内肉豚供給が依然として増加していることなどが背景

 この背景としては、96年以来の牛海綿状脳症(BSE)問題による代替需要
や豚コレラの発生により、昨年上半期を中心に堅調であった域内豚肉価格に刺激
され、オランダやデンマークなどを除くEUの繁殖用雌豚頭数が引き続き増加し
た結果、肉豚供給が増加していることが挙げられる。97年12月期の飼養頭数
調査によると、EU15カ国の繁殖用雌豚頭数は、前年同期比2.4%増の約1,
329万頭となり、国別では、ドイツ、フランスが、それぞれ2.4%増、3.
9%増、スペインが8.6%増などとなった。この結果、欧州統計局では、98
年の15カ国の豚と畜頭数は、前年比3.2%増の約1億9千5百万頭とみてい
る。

 また、@オランダでは、4月に生体豚輸出が一部解禁され、5月には国内の移
動制限区域がすべて解除されたため、肉豚供給が一段と増加していること、Aデ
ンマークなどの主要輸出先である韓国ほか一部のアジア諸国において、通貨急落
の影響から輸入需要が減退していることなどが価格低下に一層の拍車をかけてい
る。


2年ぶりに輸出補助金の交付を再開

 こうした中で、EUの豚肉管理委員会は5月13日、オーストリア、デンマー
クなどから豚肉市況回復に向けての支援要請を受け、生鮮、冷蔵の豚枝肉および
骨付き豚部分肉に対して20ECU(約2,970円)/100kg、豚バラ肉(ベ
リー)対して13ECU(同1,930円)/100kgの輸出補助金を交付す
る決定を行った。これらに対する輸出補助金の交付は、96年6月以来約2年ぶ
りであり、5月14日から6月30日まで適用されることとなっている。また、
交付対象数量については、97/98年度のEUにおける豚肉の補助金付き輸出
が、ガット・ウルグアイラウンド(UR)合意に基づく限度枠の30〜35%し
か消化されていないため定められておらず、その適用となる地域は域外共通とな
っている。

 今回の決定に対し、業界関係者の見方は分かれている。フランスの業界団体は、
この措置がこれ以上の豚肉市況の緩和を防止し、また、韓国向け豚肉輸出への信
用措置と併せてEU最大の輸出先であるロシアにも輸出を伸ばしている米国と競
合できるとして歓迎している。一方で、市場アナリストは、ドイツ市場価格情報
センターが、98/99年度(4月から3月)のEU15カ国の豚と畜頭数は、
前年同期比6%増の2億頭以上と予測するなど、今後もしばらくの間豚肉市況の
緩和が予想される中で、この措置では抜本的な需給引き締め対策とならないと非
難している。


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