豚の飼養頭数削減に関する法案が成立(オランダ)


家畜排せつ物の削減が主な目的

 オランダ上院議会では4月、環境問題の一つとなっている家畜排せつ物(リン
酸塩)の削減を主な目的とする、国内の豚の頭数削減に関する法案を可決した。
この法案は、昨年7月農林大臣から提案され12月に下院議会を通過していたも
ので、飼養頭数の削減率の引き下げなどをめぐり生産者団体などの反発が見られ
たこともあって、審議の過程で修正が加えられようやく成立した。


2000年までに豚269万3千頭、リン酸塩1万4千頭を削減へ

 今回成立した法案では、豚の飼養頭数削減は、今後、次の通り2段階で実施さ
れる。

第1段階 98年中に10%の頭数を削減する。ただし、環境対策に協力的な養
    豚農家に対してはこのうち5%、放し飼い飼育を実施している養豚農家
    に対してはすべての削減が免除される。

第2段階 2000年までにさらに15%を削減する。このうち10%の削減は
    すべての養豚農家に対して課せられるが、残りの5%については、リン
    酸塩の低減に適した飼育方法を実施していない養豚農家に対して課せら
    れる。

 以上のように環境および動物愛護への貢献が図られている養豚農家に対しては、
削減率の引き下げあるいは免除が規定されている点に特徴がある。

 この結果、2000年までに269万3千頭の豚が削減され、1万4千トンの
リン酸塩が減少する見込みである。なお、同国政府は、この頭数削減計画の実施
に約4億7千5百万ギルダー(309億円)の支出を見込んでいる。


生産割当枠の売買

 各養豚農家には、削減の実施に当たって、95年または96年の生産実績に応
じた生産割当(すなわち豚コレラ発生以前の実績頭数(約1千4百万頭)を基準)
が配分される。彼らはこれを売買することができる。養豚農家はこの生産割当枠
を売り渡す場合、98年が割当枠の40%以内、99年が同60%以内、200
0年以降が同25%以内と、限定的な売り渡しが認められている。


豚コレラ対策も兼ねる

 この法案は、家畜の排せつ物の削減対策として定められたが、併せて、昨年2
月以降に発生しオランダに多大な被害をもたらした豚コレラ対策としても位置付
けられている。これまで、同国の家畜伝染病まん延の大きな要因の一つとして、
国内の主要な生産地帯である北ブラバント州などにおける豚の高密度飼養の実態
が家畜防疫上の問題点として指摘されていた。このため、オランダ政府としても
問題解決に向けて早急な対応が迫られていた事情があった。

 なお、この法案は6月1日から施行されたが、同国政府は、さらに国内の豚の
生産地帯を10または11の指定地区に制限する計画を発表した。1地区の豚飼
養頭数は、100万頭を超えないこととされている。



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