食肉業界新団体の骨格決まる(豪州)


7月、民営化組織MLAほかが発足

 現行の食肉関係3団体(特殊法人)の再編については、昨年3月にアンダーソ
ン第一次産業大臣が再編案を示して以来、生産者部門やと畜加工業部門など業界
のセクター別代表6団体と政府による調整が続いてきたが、4月27日に再編後
の基本的な骨格について合意がなされた後、組織構成や人事などが決定した。

 政府発表によると、既存の豪州食肉畜産公社(AMLC)、食肉研究公社(M
RC)および食肉産業協議会(MIC)の特殊法人3団体は本年6月30日に消
滅し、7月1日からは、生産者課徴金を主な財源とする「豪州食肉畜産会社(M
LA:Meat & Livestock Australia)」、と畜加工業者によって独自に設立さ
れる「豪州ミート・プロセッサー・コーポレーション(AMPC:Australian 
Meat Processor Corporation)」、また同様に家畜輸出業者による「ライブコ
ープ(Livecorp:Australian Livestock Exporter Corporation)」が、いず
れも民営化された組織として発足する。


生産者の声がより強く反映

 これまで、AMLCとMRCにより実施されてきた輸出・販売促進事業や研究
開発事業の多くはMLAに引き継がれる。また、MLAの事業に関しては、畜種
や各セクター別の拠出資金の流れと各事業との関連が明確化されるほか、生産者
にMLAの部長級職の解任権を与えるなど、会計をガラス張りにするとともに、
最大の費用負担者である生産者の声がより強く反映されるようになったとしてい
る。

 一方、AMPCとLivecorpは、それぞれ、食肉加工業者と家畜輸出業者を統括
する団体としての役割を果たし、業界を代表して、MLAに初年度拠出金を支払
うことになる。

 これらの新3団体の他には、今回の合意に参画した6団体の代表によって構成
される食肉諮問評議会(RMAC)が新たに設立され、民営化される新3団体の
監督指導、業界全体としての基本戦略の設定、AMLC/MRC時代からの資産
管理などを行う。RMACは、第一次産業大臣の諮問機関としても機能するとし
ており、政策面を含む幅広い分野で業界の指令塔的な役割を担うとみられる。


新たな下部組織も設立

 さらに、これまでAMLCの傘下機関として、生体から食肉製品に至るまで統
一した規格・用語を設定・管理するとともに、輸出用食肉処理工場の認定などを
行っていた豪州食肉統一規格管理機関(AUS−MEAT)が、MLAとAMP
C双方からの出資によるジョイントベンチャーの形態をとり、民営化されること
となった。これにより、AUS−MEATの運営・維持は、生産者側と加工業者
側が均等に負担して行われることになった。

 また、食肉および食肉加工品の安全性を保証する目的で従来から運営されてき
た食品残留物監視小委員会(RMG)を拡大継承する形で、「セーフミート(Sa
femeat)」という組織が新たに設立された。これは、食肉および食肉加工品の安
全性を保証するため、食肉の全国規模の安全基準の確立とその統一的な実施に向
けた監視を行うほか、危害分析重要管理点監視(HACCP)方式の導入状況の
調査、食肉産業における研究開発の必要性の調査などを行う官民合同の機関とし
て設立され、政府と業界のより密接な協力体制の確立がうたわれている。


財源負担をめぐり難航も、合意

 昨年3月のアンダーソン案で、と畜加工および家畜輸出の両セクターへの課徴
金が任意とされたことから、焦点の一つとなっていたMLAの財源負担について
は、98/99年度は、と畜加工セクターからAMPCを通じて約1千3百万豪
ドル(1豪ドル=約88円)、また家畜輸出セクターからLivecorpを通じて約9
0万豪ドルが、拠出されることになった。

 収入が生産者課徴金に限定された場合、MLAの年間予算規模は、AMLC/
MRC時代の1億豪ドルから6千6百万豪ドル程度に減少し、事業内容の大幅縮
小が懸念されていたが、初年度のMLAの年間予算額は最低でも約8千万豪ドル
は確保されることになった。と畜加工および家畜輸出両セクターからみても、従
来の年間課徴金支払額が合計で約5千1百万豪ドルであったことからすれば、大
幅な節約になるため、合意に当たっては、生産者、と畜加工業者および家畜輸出
業者間で妥協が成立したものと想像される。

 アンダーソン案の発表から1年以上、新団体設立予定日まであとわずかと迫っ
た時点での合意であり、調整は相当に難航したものとみられる。しかし、結果的
に政府の介入を極力減らしたという点において、今回の一連の業界再編が、今後
の豪州食肉産業の発展に寄与することになろうとアンダーソン大臣は述べている。


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