食糧流通体制の改革を推進(中国)


猶予できない流通体制改革

 4月27日から北京で開催された全国食糧流通体制改革工作会議において、朱
鎔基首相は食糧流通体制の改革を直ちに断行すべき時期にあるとして、全国規模
でこれに取り組む姿勢を明らかにした。

 中国では、以前から、政府の政策活動と国有企業経営の未分離による国家財政
と企業財政の混乱、食糧総販売量の半分近くを担う国有食糧企業における人員過
剰などの経済効率の悪さなどが問題となっており、政府による食糧の需給政策に
少なからぬ影響を与えてきた。そうしたことから、朱首相は、近年は農業の地位
強化や食糧買付けに係る保護価格の導入などのてこ入れによって、食糧増産が図
られてきたとしながらも、地方政府が強い指導力を発揮して、本年の重要課題で
ある食糧流通体制の改革目標を達成することを求めている。


四分離、一整備が主目標

  朱首相が重点を置いて行うべきとした流通対策(四分離、一整備)の骨子は以
下のとおりである。

1  政府と企業の分離

  企業行為のほか、行政機能も持つ国有食糧企業の赤字は、その性格上、国家財
政と民間銀行の双方によっている。今後は政府の食糧行政管理部門のみが社会全
体の食糧流通を管理し、食糧企業は食糧行政管理機能を放棄して市場経済活動の
みを行い、コスト引き下げを図る。                         

2  国家備蓄と経営在庫の分離
 
 国家の備蓄用食糧と企業の流通用在庫は管理上分離する。さらに、中央と地方
の二段階備蓄体制を設け、地方ごとに充分な食糧を備蓄する。

3  中央と地方の責任・権限の分離

 中央政府は全国レベルでの食糧需給マクロコントロールに集中する。一方、地
方政府は各地域の食糧生産、流通、価格管理に対し全面的に責任を負う。

4  新旧財務勘定の分離

 保護価格による余剰食糧の買付けを行うための買付資金の流用を防ぐため、従
来の会計と分離した独立会計を採る。

5  食糧価格形成体制の整備

 食糧価格は市場における需給メカニズムで決定し、食糧企業は市場価格で食糧
を販売する。また、県レベルの食糧流通市場形成の強化、食糧市場の情報ネット
ワークの整備を通して流通の活発化を図る。


8%成長のカギを握る改革の動向

 朱首相は、今回の食糧流通体制の改革を共産党中央委員会と国務院が総力をあ
げて臨む今年最も重要な任務と位置付けているが、その推進力となるのは首相に
就任した今年の全人代で自らがうたい上げた経済成長8%の達成への悲願に他な
らない。本改革は、農民の生産意欲を削ぎかねない現在の食糧流通機構の矛盾を
取り除き、食糧の持続的、安定的増産を図るとともに農民の収入の増加を狙った
ものである。朱首相は、食糧買付けに当たっては、農民の自家用備蓄を除いた余
剰食糧を保護価格で無制限に買付けるとの方針を示している。こうした措置によ
る農民の購買力の増大が農村部における消費活動を刺激し、「高い目標」とされ
ている経済成長8%実現に向けた最大の内需拡大策になるものと期待されている。



元のページに戻る