マレーシア、畜産の低コスト化を模索


政府は輸入削減に努力

 マレーシアでは、通貨の下落により大きく上昇した生産コストの低減を図るた
め、飼料などの輸入を削減し、その代替として安価な国産品の活用に努めている。

 今般、マレーシア政府は、1年以内に輸入削減の効果を上げるため、@大規模
生産の奨励、A国産品に代替させるための輸入品の需要調査、Bより安価な輸入
先の確保などを内容とした緊急対策の実施により、97年に前年比11%増の1
14億リンギット(1リンギット=約35円)となった食料品や農業資材などの
輸入を大幅に減少させ、国産品の使用割合を高めるとしている。

 なお、政府は、鶏肉価格を引き下げるため、輸入飼料に代る国産品として、サ
ツマイモおよび魚骨紛を挙げている。


天然資源を最大限に活用

 一方、ジョホール州では、食糧増産のために確保している3万6千ヘクタール
の遊休地のうち、400ヘクタールを高収穫品種のトウモロコシの栽培用地とし
て提供することで飼料コストの引き下げに努力している。また、好調な輸出が続
いているパームオイルの主産地である同州は、パームオイル・プランテーション
用地を利用した肉牛の放牧事業を試みている。肉牛の糞尿がヤシなどへの有機肥
料として、また、群生する草が肉牛の粗飼料として有効利用できるため、かなり
の生産コストの節減効果があるとしている。先般、この複合農場プロジェクトの
オープニングに参列したマハティ−ル首相は、経済危機打開には、マレーシアに
与えられた自然の恵みを最大限に活用すべきとして、国を挙げて生産コストの削
減に取り組む姿勢を示した。


国産品利用が経済危機打開のカギ

 しかしながら、通貨の下落により高騰した輸入飼料によって生産された鶏肉、
豚肉は、かなりのコスト高となって小売価格の上昇を来たしている。マレーシア
では、豚肉をタブーとするイスラム教徒が多いため鶏肉の消費量がかなり多いだ
けに、鶏肉価格の上昇は同国にとって大きな社会問題となっている。

 同国では、国産品の使用による生産コスト低減の早期達成が、経済危機打開の
一つのカギになるものとされている。


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