フィリピン、鶏肉の供給減で価格が上昇


一部スーパーの店頭では、鶏肉が姿を消す

 フィリピンの貿易工業長官が、ラモス大統領への定例報告書の中で明らかにし
たところによると、5月は国内で祭祀などによる鶏肉消費が増大する時期となっ
ているが、これに加え、先般実施された大統領選挙により需要が一層増大するこ
ととなった。一方、鶏肉の生産量は減少しており、マニラ市内の一部のスーパー
マーケットでは店頭に並べる鶏肉がなくなるなど、供給不足が深刻化している。

 同国は、近年の経済成長を背景に、畜産物の消費量が年々増加してきた。鶏肉
については、1人当たりの消費量は96年では6.3kgと、まだ日本の約6割に
過ぎないが、消費量全体では前年比14%増の45万5千トンと増加している。
また、国内生産量も消費量とほぼ同じ伸びで拡大し国内生産で需要を賄う状況と
なっており、96年では前年比14%増の45万5千トンとなっている。


昨年末のエル・ニーニョ被害で生産減

 農業生産は、昨年来のエル・ニーニョの影響を受けて干ばつなどの被害が大き
く、養鶏部門においては高温のため鶏の食欲不振による成長速度の低下と、熱射
病による死亡率の増加によって、主要な産地の一部では30%近く生産量が減少
したとの報道もある。

 そうしたことから、1日で50万羽の鶏を消費するといわれるマニラ市内では、
一部のスーパーマーケットで鶏肉の供給不足によって価格が上昇し、農業省が最
近行った調査においても、4月は中抜きと体1kg当たり78ペソ(1ペソ=約3.
6円)であったものが、5月最終週では100ペソに値上がりする状況となって
いる。


鶏肉消費の減退を懸念

 フィリピン鶏肉インテグレーター協会では、スーパーマーケット側が求めてい
る鶏肉は、中抜きと体の状態で1.4kgから1.6kgのものであるが、高温が続
く現在の状況では、この体重の鶏を生産することはできないとしている。このた
め、同協会では、需給が安定するにはまだ時間を要するとみており、今後、鶏肉
価格のさらなる上昇による消費の減退が懸念されている。


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