米・EU間に輸出補助金競争復活の兆し(米国)


USDA、商品アクションプランを提案

 グリックマン米農務長官は、先般、上院農業・栄養・林野委員会で、低迷する
農産物価格の支持を目的とした商品アクション・プランを提案した。これは、輸
出促進計画(EEP)の再開を含むものとなっている。

 アジア経済危機と米ドル高を背景として、米国の農産物輸出は低迷しつつある。
米農務省(USDA)によると、今年度の農産物輸出額は、前年度に比べ40億
ドル(約5千4百億円)減少し、約560億ドル(約7兆5千6百億円)になる
見通しである。この結果、国内の農産物価格も低迷しつつあり、USDAは、関
連業界から何らかの措置を講じることを求められていた。


輸出補助金により農産物輸出を促進

 商品アクション・プランによると、第1に、中東市場向けの約2万トンの家き
ん肉の輸出に対して、EEPに基づく輸出補助金を交付するとしている。同長官
は、これは、家きん肉がEUとの検疫衛生基準平等化協定から除外され、EU市
場への輸出機会を失っていることに対する対抗措置であるとしている。このほか、
EU産大麦が補助金付きで米国に輸出されること、遺伝子組み換えトウモロコシ
種子の認可に対するフランスの抵抗もその理由として挙げている。

 第2に、過去3年間に、乳製品輸出促進計画(DEIP)に基づく補助金付き
輸出枠が与えられていたにもかかわらず、実際には使用されなかった脱脂粉乳3
万トン分の輸出割当枠について、今年度、メキシコおよびカリブ諸国向けの乳製
品輸出に対し、追加的に再割当てを行うとしている。


高まる他の農産物輸出国からの批判

 このような米国政府の攻撃的な動きに対して、国内関連業界からは歓迎の声が
挙がっているものの、逆に農産物輸出国からは批判の声が高まっている。

 カナダのバンクリフ農業大臣は、「米・EU間の輸出補助金戦争は、カナダだ
けでなく世界中の農業生産者に困難を強いるだけだ」と厳しく批判している。ま
た、ニュージーランドのスミス農業大臣は、「米国の行動は輸出補助金に関する
WTO協定の精神に反するばかりでなく、農産物貿易から輸出補助金の使用を取
り除こうとする共通の目的にも合致していない」と批判している。なお、オース
トラリア酪農連盟会長も、両大臣と同様の懸念を表明している。

 こうした中、USDAは5月27日、EU産大麦の米国向け補助金付き輸出へ
の対抗措置として、EEPに基づき、アルジェリア、キプロスおよびノルウエー
向けに3万トンの大麦を輸出すると発表した。今後の輸出国の反応が注目される。 


元のページに戻る