EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○ 牛肉需給ギャップは徐々に解消する見通し


牛飼養頭数は微減傾向で推移

  EUの牛肉諮問委員会(業界関係者などで構成する委員会で、年に数回、短期
的な需給見通しを検討する)は、98年および99年の牛肉需給見通しを取りま
とめた。これによれば、今後のEU15カ国の牛飼養頭数は減少傾向で推移する
と見込まれ、99年には97年のレベルを約200万頭下回る8,250万頭に
なるとみられている。

  これは、酪農部門において生乳クォータが引き上げられない状況の下、一頭当
たり乳量が増大するのに伴い、乳用経産牛が引き続き減少するとみられるためで
ある。EUでは、肉牛生産の3分の2を酪農部門に依存する構造となっており、
酪農産業の動向が牛飼養頭数に大きな影響力を有している。さらに、96年の牛
海綿状脳症(BSE)問題を契機に発動された子牛のと畜奨励金制度(Calf Pro
cessing Premium)や子牛の早期出荷奨励金制度(Early Marketing Premium)も
頭数減に影響していると見られる。


飼養頭数減を受けて牛肉生産も減少

  牛肉生産量は、91年にピークの866万トン(EU12カ国)を記録して以
来、減少傾向で推移したが、97年においてもこの傾向を引き継ぎ、前年比1.
0%減の787万1千トンとなった。今後も、飼養頭数の減少に伴うと畜頭数減
により、98年の牛肉生産量は前年比3.4%減の760万3千トンに、99年
も1.8%減の746万6千トンに減少すると予想されている。

  なお、98年の牛タイプ別のと畜頭数の増減率を見ると、経産牛が3.7%減、
雄牛/去勢牛が3.6%減と落ち込みが大きくなっている。


牛肉消費量は緩やかに回復

  一方、消費面では、96年のBSE問題によって、消費者の牛肉に対するイメ
ージが大きく損なわれた。これにより、一人当たりの年間牛肉消費量は大幅に低
下し、96年は前年比7.5%減の18.6kg(枝肉ベース)となった。97年
以降の消費量は徐々に回復するとみられ、99年には19.5kgに達するものの、
95年以前の20kg台には及ばないものと見込まれている。

  これにより、EU全体の消費量は、96年には700万トンを割り込んだもの
の、その後回復し、99年には728万3千トンになると予想されている。


牛肉需給は徐々に回復する見通し

  このように、99年までの短期的な牛肉需給見通しでは、生産減に対し、消費
は緩やかに回復するとみられることから、需給ギャップは徐々に解消に向い、9
7年末に60万トン以上に膨れ上がった介入在庫量は、98年末に49万トン、
99年末に23万7千トンと減少に向かうとみられている。

  なお、最近の介入在庫をめぐる動きとしては、EUはこれまでの態度を一転し、
輸出向けの売却を開始した(輸出補助金対象外)。これまで北アフリカ、中近東、
旧ソ連圏向けに数回の入札が行われ、さらに、6月末締め切りで4万トンの入札
を発表している。これまでの落札価格は、骨付きで110ECU/100kg(約
1万5千円)程度となっており、買い上げ時の価格が約260ECU/100k
g(約3万6千円)であったことから、売買差額は▲150ECU/100kg
(約2万1千円)となっている。

牛肉の短期需給見通し(EU15カ国)   

 資料:牛肉諮問委員会(Beef Advisory Committee)
  注:生産量、輸入量、輸出量、消費量および介入在庫量は
    いずれも枝肉ベース                                          

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