◇絵でみる需給動向◇
デンマーク豚肉輸出機構連合(DS:同国のと畜組合の上部団体)によると、 EU最大の豚肉輸出国である同国の97年の輸出量は、域内・域外向けがともに 順調に増加し、前年比13.3%増の138万7千トン(生体、調製品などを含 む、製品重量ベース)となった。 そのうち、同国の輸出量の6割以上を占める域内向けは、輸出が好調であった イギリスを除き、最大の輸出先のドイツ向けが17.1%増の32万5千トン、 EUの主要な豚肉生産国であるフランスやイタリア向け輸出もそれぞれ12.0 %、6.2%の増加となった。 一方、域外向けでは、最大のシェアを占める日本向けが13.7%増の15万 7千トンとなったほか、近年、国内の畜産業の不振が報告されているロシア向け が39.3%、97年7月に豚肉の輸入を自由化した韓国向けが5.3%の増加 となるなど、軒並み増加となった。 97年のデンマークの豚肉輸出量 資料:DS 注1:製品重量ベース 2:生体、調製品などを含む。
デンマークの豚肉輸出が増加した原因は、域内向けでは、97年にEU有数の 輸出国(生体豚では最大)であるオランダや、EU第2位の生産国であるスペイ ンなどで発生した豚コレラの影響が長期化したため、清浄国である同国に引き合 いが集中したことが大きい。 特に、EU最大の豚肉生産・消費国であるドイツは、夏場の豚肉需要が好調で あったため、オランダに代わる供給元としてデンマークから生体豚(子豚を含む) を中心に輸入を行なった。DSによれば、97年のデンマークの生体豚輸出(頭 数ベース)は、ほぼドイツ向けを中心に前年比69.1%増の117万5千頭と 大幅に増加した。 また、域外向けでは、96年下半期以降急減していた日本向けが、97年3月 の台湾での口蹄疫発生による代替需要と、7月のセーフガード(SG)解除など により急速に回復したことに加え、ロシア向けの大幅な増加なども一因となった。
しかしながら、現在、デンマークの豚肉輸出は、厳しい状況となりつつある。 EUの97年12月期の飼養動向調査では、オランダを除き、ドイツ、スペイン、 フランスなど主要国の繁殖用雌豚頭数が、押し並べて増加しており、15カ国で は2.4%増の1,286万1千頭となった。この結果、域内の肉豚の出荷が引 き続き増加することが明らかになった。また、オランダでも豚コレラの発生が時 折見られるものの、そのピークは過ぎ、生体豚の域内向け輸出が近いうちに再開 される状況にある。 また、97年下半期以降、域外向けの主要輸出相手国である韓国や東南アジア 諸国の通貨急落の影響が響いてきている。特に、韓国では競合国である米国など が豚肉を含む農産物の輸出信用保証を行なっていることにより、デンマークから の輸出はほとんど行われていない状況にある。これに対して、デンマーク政府は、 EU委員会に対して豚肉(冷凍、冷蔵)の一部の品目に対して輸出補助金の再開 を要求したが、同委員会はこれを却下した。 こうした中で、デンマークは、昨年輸出を大幅に伸ばしたロシア市場をさらに 開拓しようとしている。4月に同国の王族や農業大臣をはじめとする代表団は、 首都のモスクワなどで同国産豚肉のプロモーション活動を大々的に行なった。
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