USDA、セーフティネット強化対策を発表(米国)


高まるリスク管理の重要性

 96年農業法は、農家に対して、市場のシグナルに応じて穀物を生産するよう
奨励している。この結果、農家の生産する穀物の組み合わせは変化しつつあり、農
産物の価格変動などに対するリスク管理の必要性が高まっている。このため、作
物保険制度についても、穀物生産を取り巻く状況の変化に対応した制度の見直し
が必要となっていた。

 こうした中、米農務省(USDA)は、4月2日、農産物の価格変動などに伴
うリスクを軽減するため、家族経営に対する安全保障(セーフティネット)措置
を改善する一連の対策を発表した。これによると、選択的穀物生産に係る保険需
要に応えるため、保険がより迅速に利用可能となるよう、手続きおよび規則の更
新を行うなどとしている。


計算手法の変更により保険料の激変を緩和

 従来、USDAは、作物保険制度の健全な運営を図るとともに、保険料の全体
的な上昇を避けるため、他の農家に比べて著しくかけ離れた損害実績を有する農
家の保険料の調整を目的として、非標準分類システム(NCS)といわれる手続
きを用いてきた。

 しかしながら、実際には、この選択基準では、災害に関連した損失とそれ以外
の地方特有の要因とを明確に区別できないという問題があった。この結果、生産
者によっては、突然、保険料を引き上げられるというケースも生じていた。この
ため、将来、NCSに基づく手続きを廃止し、必要が生じたときに緩やかな保険
料の調整を行う手続きに変えたいとしている。今回の対策には、以上のほか、@
保険を新しい穀物および新しい地域に拡大することを容易にすること、A農家に
対する保護を強化するためのパイロット・プログラムの開発などが含まれている。
なお、これら一連の対策は、99年度の穀物生産から適用されるとしている。


USDA、ローンレートの上限撤廃を模索

 また、グリックマン農務長官は、農業主産州の議会代表者らとの会合の席で、穀
物のローンレートの上限を撤廃するとともに、これを過去5年間の平均農家受取
価格の85%に戻すという案を支持する旨表明した。しかしながら、既に同農務
長官自らが示唆しているように、ローンレートの変更は、予算の観点から、議会
からの厳しい抵抗が予想され、このような案が議会を通過する可能性は極めて低
いものとみられている。

 しかし、農務長官は、市場価格が低迷している場合にローンの支払期日を延長
する権限については、議会からの承認を得たいとしている。



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