◇絵でみる需給動向◇
欧州統計局によれば、97年のEU15カ国の牛肉生産量は、前年比1.0%減の787 万 1 千トンとなった。牛肉生産量は、91年の過去最高の866万トン(12カ国)を 記録して以来、減少傾向で推移している。 97年の牛肉生産の内訳を見ると、成牛肉が前年比0.8%減の710万1千トンとわ ずかな減少にとどまったのに対し、子牛肉は3.1%減の77万 1 千トンとなった。 EUでは、成牛肉が全体の9割、子牛肉が1割を占めており、米国など他の牛肉生 産国に比べ子牛肉の割合が高くなっている。 97年のEU牛肉生産量(枝肉ベース)資料:欧州統計局 注1:数値は暫定値 注2:カッコ内は前年比
EU15カ国の中で、牛肉生産量が100万トンを超える国はフランス、ドイツ、イ タリアの3カ国である。これら3カ国の生産量は、全体の55%を占めており、それ ぞれ1.0%、2.2%、1.5%減少したことが、全体の生産減に影響している。主要生 産国の中で、生産が増加した国はイギリス、アイルランドとなっている。 牛肉生産に占める子牛肉の割合は、国によって大きな差異がみられ、オランダ (34.8%)、フランス(14.6%)、イタリア(13.7%)で高く、ドイツ、イギリ ス、アイルランドで低くなっている。
介入在庫量は、96年 3 月に牛海綿状脳症(BSE)問題が発生して以来、増加の 一途をたどり、97年11月には62万7千トン(枝肉ベース)に達した。しかし、12月 はデンマーク、イタリアなどで積極的な放出が行われ、EU全体で放出量が買入 量を上回ったことから、在庫量は1万トン減の61万 7千トンと21カ月ぶりに減少 に転じた(左図参照)。さらに、本年1月においても、各国が足並みを揃えた放 出を実施したことから、介入在庫量は、さらに減少に向かうものと見られる。
EU委員会は 3 月18日、共通農業政策(CAP)の改革案を採択したが、その内 容は価格支持から所得補償への一層の政策転換を目指すものとなっている。主要 農産物では、乳製品が15%、穀物が20%の価格支持水準の引き下げが示されたの に対し、牛肉は30%と最も高い引き下げ率が提案された。これは、同委員会が将 来の牛肉の需給見通しに関して、一時的には子牛のと畜奨励事業(Calf Process ing Premium)などにより生産抑制の効果がみられるものの、放置すれば、将来、慢 性的な供給過剰がもたらされるとみているためである。
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