EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○牛肉等の輸出は減少傾向で推移


97年は前年比4.9%減

 イギリス食肉家畜委員会(MLC)によれば、97年のEU15カ国からの域外向け牛肉
等の輸出(生体牛、調製品を含む)は、前年比4.9%減の105万トン(枝肉ベース)
となった。牛肉等の輸出は、91年の132万5千トン(EU12カ国)をピークに6年連
続の減少となり、この間で 2 割以上の減少となった。

 輸出された牛肉等の内訳を見ると、冷凍・冷蔵牛肉が全体の86.3%に当たる90
万6千トン、生体牛が7.7%の8万1千トン、調製品などが6.0%の6万3千トン
となった。

 これらを前年と比較すると、冷凍・冷蔵牛肉が前年比3.1%増の90万 6 千トン
になったものの、生体牛輸出が41.8%減の 8 万1千トンと大幅に減少した。これ
は、牛肉についてはロシア向け輸出が急増したのに対し、生体牛については主要
な輸入国である北アフリカ諸国などが牛海綿状脳症(BSE)侵入を懸念し、その供
給源をアイルランドなどから豪州に切り換えたためである。

 なお、96年 3 月にBSE問題により牛肉の禁輸措置が講じられたイギリスでは、
本年6月以降、北アイルランド産のみを対象に輸出解禁となったが、イギリス本
土に対する禁輸措置は、依然継続中である。

輸出国別の牛肉等の域外向け輸出量

 資料:MLC
 注 1 :97年の数値は暫定値、カッコ内は前年比である。
   2 :数値は枝肉ベース


国別ではトップの座はアイルランドからドイツへ

 国別の輸出状況を見ると、昨年までトップの座にあったアイルランドが、生体
牛輸出の急減(95年が 7 万 4 千トン、96年が4万トン、97年が 2 千トン)によ
り、全体の輸出量でも21.8%減と大幅に減少し2位に転落した。代わって、前年
とほぼ横ばいであったドイツが、アイルランドの大幅減によりEU最大の牛肉等の
輸出国となった。他の主要国では、オランダ、イタリア、デンマークが増加した
一方、フランス、ベルギー、スペインで減少した。


ロシア向け輸出が急増

 一方、EUからの仕向け先別の牛肉等の輸出をみると、地理的に近いロシアを含
むEU以外の欧州向けが全体の53.6%と過半を占め、次いでアフリカ向けが25.3%、
中東およびアジア向けが19.8%と続いている。

 特に大きな変化が見られたのは、ロシア向けが前年比22.7%増の42万7千トン
と、全体の輸出量が減少する中で際立った増加をみせ、全体のシェアでも4割以
上を占めるに至った点である。

EUからの仕向け先別牛肉等の輸出量

 資料:MLC
 注 1 :97年の数値は暫定値、カッコ内は前年比である。
   2 :数値は枝肉ベース


98年上半期はさらに減少へ

 98年に入ってからの牛肉輸出(主要6カ国(ドイツ、フランス、イギリス、オ
ランダ、アイルランド、イタリア);調製品、生体牛を含まない。製品重量ベー
ス)は、ほぼ前年を下回って推移しており(左図参照)、98年上半期の輸出量は、
前年同期比で17.4%も減少した。さらに、輸出の4割以上を占めるロシアでは、
今年 5 月末から金融・通貨危機が顕在化し、 8 月17日には同国の通貨ルーブル
が実質切り下げられたことから、下半期の牛肉輸出は、一段と厳しい状況が予想
されている。


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