タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○減少傾向の生産量と下げ止まりを見せる輸出価格


生産量は減少局面に

 タイ農業協同組合省農業経済局の発表した5月のブロイラー生産量は、推定で
77.1百万羽と前月比5.7%減となった。今年は2月が前月比0.8%増となった他は、
各月とも前月比で減少となっており、同国の鶏肉生産量に減少の兆しが見られる。

 これは、特に 4 月から 5 月にかけてエルニーニョの影響による熱波が発生し、
高温による食欲減退からくるブロイラーの体重増加率の減少や、死亡率の上昇が
原因であると見られている。このため、農家の生産意欲も低下しており、97年2
月以降、ほぼ前年を上回る水準で推移してきたブロイラーのヒナ価格は、今年4
月と5月においてそれぞれ7.60バーツ/羽(前年同月比16.9%安)、6.17バーツ
(同30.7%安)と大幅な下落となった。

 同国では、これから雨季に入り気温の低下など生産量増加の要因があるが、一
方で、国内消費の減少と輸出市場の伸び悩みという需要減退の要因もあり、景気
の動向によっては生産量が引き続き減少するものと見られている。


輸出価格は下げ止まり

 タイの冷凍鶏肉の平均輸出価格(左図参照)は、バーツベースの場合、バーツ
の下落幅が米ドルベースでの輸出価格の引下げ幅より大きかったことなどから、
急速なバーツの下落に長期契約などの輸出品を中心に通貨下落の始まった昨年7
月以降、急上昇した。また、これはバーツの急落に伴い、輸入飼料などの価格上
昇を招き、生産コストが大幅にアップしたことも一因と考えられる。特に、為替
レートが1バーツ=2.54円となった今年1月には99,397バーツ/トンの最高値とな
った。しかし、その後バーツが値を戻し、最近では 1 バーツ=約3.5円と落ち着
いた動きを示しているため、輸出価格も、72,000バーツ/トンと通貨下落直前の
水準まで低下し、この水準で下げ止まりを見せている。

 一方、現地での取引に使われている米ドルベースの平均輸出価格は、通貨下落
以前には、2,500〜2,600米ドル/トンの水準であったものが、 1 米ドル=51.39
バーツに低下した 1 月には1,900米ドル/トンの水準まで急落した。しかし、最
近ではこの水準でほぼ横ばいとなっており、小康状態を保っている。

 今後の価格は、同国産冷凍鶏肉の最大の輸入国である日本の、景気低迷に伴う
価格引き下げ圧力から、さらに輸出価格下げの可能性があるものの、国内のコス
ト増による上昇の要因の方が強いものと見られている。

◇図:ブロイラー平均輸出価格とバーツ為替相場◇


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