世界の飼料穀物の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○低迷する米国トウモロコシ価格


今年の収穫量、史上 2 番目の豊作

 米農務省(USDA)が 8 月13日に発表した穀物の需給予測によれば、98/99年度
(9月〜 8 月)における米国のトウモロコシ生産量は、前年度比 2 %増の約2億
 4 千4百万トンと見込まれている。南部諸州では、干ばつやアフラトキシン*の
発生により、テキサス州で前年度比18%のマイナスが予想されるなど、前年度割
れが見込まれるものの、これらの州の全体に占める割合が比較的小さいため、主
産地での好天を背景とした増産がマイナス分を上回り、全体では前年度より約57
0万トンの増加となった。

 この予測どおりとなれば、94/95年度の2億 5 千 7 百万トンに次いで、史上2
番目の豊作となる。また、単位当たり収量についても、前年度の127ブッシェル/
エーカー(約 8 トン/ヘクタール)から98/99年度には130ブッシェル(約8.2ト
ン)へと増加が見込まれており、これは94/95年度の138.6ブッシェル(約8.7トン)、
92/93年度の131.5ブッシェル(約8.3トン)に次ぐ高い水準となる。

 なお、受粉後の生産に悪影響を及ぼす天候上の懸念材料として、早霜が挙げら
れるが、今年の作物の成育は、例年になく速いペースで進んでいることから、発
生した場合でもその影響は、限られたものになるとみられている。

 * アフラトキシン

 かびの一種アスペルギルス菌によってトウモロコシ中などに生ずる菌毒素


需要を上回る供給の伸びで在庫は増加

 一方、98/99年度のトウモロコシ消費については、前年度を約 4 %上回ること
が見込まれている。内訳では、輸出の伸び率が前年度に比べて約9%増と高くな
っているものの、これは前年度の輸出がアジアの経済危機などの影響で大きく落
ち込んでいたためで、一昨年度と比べると11%のマイナスとなっている。最大の
シェア(6割)を占める飼料用は、国内の畜産生産動向を反映して、前年度比約
 4 %増、これに次ぐシェア( 2 割)を有する食料および燃料等用についても、
エタノール(車の燃料として使用)や異性化糖の生産が順調であることから同約
4%の伸びが見込まれている。消費のこうした伸びも、量的に生産を上回る水準
には達しておらず、98/99年度末の在庫数量は、前年度比28%増の4千 7 百万ト
ンと予想されている。


ローンレート水準以下まで価格が下落

 USDAの一連の供給増加予測を受けて、トウモロコシ価格(シカゴ相場の先物、
期近価格の終値)は、98年 2 月以降前年を下回って推移しているが、 8 月26日
には 2 ドル台を割り込み、 1 ドル98セント/ブッシェルまで下落した。さらに
 8 月31日には、価格支持融資制度*の融資単価(ローンレート)である1ドル89
セントをも下回る1ドル87セントに値を落とした。ローンレートは、同制度の下
で市場価格を下支えするために設定された価格で、実質的な下限価格となるもの
である。しかし、価格がこれを下回る水準まで低下した理由は、トウモロコシの
需給によるというよりも、ロシアの経済危機による世界的な株式や商品市況の下
落に引きずられた形で値を下げたとの見方がなされている。

 価格は、これ以降少しずつ値を上げ、9月8日には2ドル台に回復したものの、
需給緩和の動向から依然として価格の低迷は続くものとみられる。

 * 価格支持融資制度

 生産農家が農産物を担保に商品金融公社(CCC)からローンレート(過去の市場
価格を基に算出)での融資を受ける制度。市場価格がローンレート(+利子)を
上回るときは、農家は、融資額と利子を返済し、農産物を市場で販売するため、
市場流通量が増加して価格は下がる。一方、融資期限(9ヵ月間)が来ても、市
場価格がローンレート(+利子)を下回るときは、農家は、担保の農産物をCCCへ
引き渡すため、市場流通量が減少して価格は上昇する、という仕組み。


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