米国の牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○大きく乱高下する生乳価格


7月の生乳の農家販売価格、前年同月比20.5%高

  7 月の生乳の農家販売価格は、前年同月比20.5%高の15.3ドル/100ポンドと
なり、前月と比較して1.2ドル/100ポンド上昇した。生乳の農家販売価格は、98
年 2 月の14.8ドル/100ポンドをピークに、 5 月には13.2ドル/100ポンドまで
低下したが、その後急速に回復し上昇を続けており、今年に入って、約2ドル/
100ポンドの幅で大きく乱高下している。


バター、チーズなどの乳製品の価格変動が要因

 カリフォルニア州を除く地域では、連邦ミルク・マーケッティング・オーダー
(MMO)制度に基づき、飲用規格(グレードA)生乳について用途別に最低取引価
格が設定され、オーダー内の生産者に対しては、プール乳価による支払いが行わ
れている。用途別乳価の算定基礎となるBFP(基礎公式価格)は、ミネソタ、ウィ
スコンシン両州における加工原料規格(グレードB)生乳の価格などを基に算定
されているため、乳製品の価格動向に大きく影響される。乳製品の中でも特にチ
ーズは、生乳生産の約 2 分の 1 がその生産に仕向けられることから、グレード
B生乳の価格に及ぼす影響が大きい。

 上述した本年5月の生乳の農家販売価格の低落も、同時期やや生産過剰ぎみと
なり価格を下げたチーズの影響によりBFP が引き下げられたためと見られている。
その後、記録的なバターの卸売価格の高騰に引きずられるようにチーズの卸売価
格も上昇したことを受けて、BFPおよび生乳の農家販売価格とも大幅に上昇した。
しかし、米農務省は、今後、低飼料価格と高乳価が生乳生産の拡大を誘発すると
見ており、生乳生産が増加するにつれてバターやチーズなどの乳製品価格は落ち
着きを取り戻すものと予測している。

◇図:BFPと主要乳製品の卸売価格の推移◇


チーズプラントなどがMMO制度のプール乳価制から一時離脱

 今回のBFPの乱高下によりMMO制度の問題点の一つが明らかとなった。MMO制度に
よる用途別乳価は、BFPを基に当月のクラスV(チーズ、バターなどの乳製品向け)
乳価と2ヵ月先のクラスT(飲用向け)およびクラスU(クリーム、アイスクリ
ームなどの乳製品向け)乳価が設定される。用途別乳価は、通常クラスTが最も
高く次いでクラスU、クラスVの順になるが、今回のように急激にBFPが上昇した
場合には、クラスT乳価とクラスV乳価が逆転する。このため、高いクラスV乳
価の支払いを嫌うチーズプラントなどがMMO制度によるプール乳価制を離れ、酪農
家との直接取引きを行う動きが一時的に急増したと見られる。この結果、通常、
飲用向け割合の低い上部中西部やアイダホ、テキサスなどで、プール乳価の対象
数量が激減した。これらのオーダー地域では、通常時に反して飲用向け割合の上
昇が、プール乳価を引き下げる要因として働いている。

98年 7 月におけるオーダー別最低乳価およびクラスT仕向割合

資料:USDA/AMS「Dairy Market News」


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