◇絵でみる需給動向◇
米農務省(USDA)によると、98年1〜5月の豚肉輸出量は24万3千トンで、前年 同期を41.8%上回る増加となった。輸出相手国別では、最大の輸出市場である日 本向けが前年同期比21.2%増、続くカナダ、メキシコ向けはそれぞれ22.5%増、 85.8%増と、いずれも大幅な増加を示した。しかし、日本向けの大幅増について は、昨年1〜6月までの間、特別セーフガード(SSG)およびセーフガード(SG) が発動されていたことにより、輸出水準が極めて低かったことも大きく関係して いる。また、その他の国では、ロシア向けが 2 倍以上に拡大した。 ◇図:国別輸出量の推移◇
こうした輸出増加の要因の一つは、米国内での供給過剰による豚肉価格の大幅 な下落である。USDAでは、98年 1 〜 5 月の豚肉の平均輸出単価は、前年水準を 15.6%下回っているとしており、豚肉価格の低下によりロシアやメキシコ向け輸 出が、安価な低級部位を中心として大きく伸展したものとみている。なお、98年 に入ってからの米国内の肥育豚および豚肉相場をみると、肥育豚価格は前年を30 %前後下回る水準で推移し、豚肉卸売価格(カットアウトバリュー)についても、 約20%程度の低下となっており、依然として安値状態が続いている。 ◇図:対前年増減率の推移◇
USDAは、豚肉の増産基調について99年前半まで続くと見込んでおり、それに伴 ない、豚肉の価格安も続くものと予測している。このため、今後も開発途上国向 けなどを中心に輸出が増加するとし、98年の輸出量は前年比20.7%増の57万2千 トンに、99年については前年比3.2%増の59万トンになると見込んでいる。
しかし、これまでの状況とは一転し、最近、主要な輸出市場に暗雲が垂れ込め てきている。近年拡大が目覚しいNAFTA向け輸出については、カナダで豚飼養頭数 が記録的な数値となっており、今後同国の豚肉供給力が大幅に増加すると見込ま れていることや、メキシコで94年末の大暴落以降、安定していたペソが再び下落 し始めたことが挙げられる。また、最近豚肉市場として台頭してきたロシア向け についても、国内の経済混乱が深刻化し、輸入品の価格上昇が著しい状態にある とされる。さらに、日本を始めとするアジア市場が未だ経済不況を脱しておらず、 これまでの輸出拡大に大きく貢献してきた主要国を取り巻く状況が、米国産豚肉 の輸出後退の懸念材料へと変化してきている。このため、米業界関係者はこうし た懸念材料を払拭すべく、各国の状況改善を切望している。
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