飲用乳市場をめぐる競争が激化(豪州)


国内最大の協同組合系飲用乳メーカー、自社株上場による資金調達計画を発表

 豪州では、ニューサウスウェールズ(NSW)州を基盤とする国内最大の協同組合
系飲用乳メーカーであるデイリーファーマーズ社が、この度、自社株式の一部を
株式市場に上場することにより、 2〜 3 億豪ドル(約170〜260億円: 1 豪ドル
=87円)の事業資金を調達するという計画を発表した。

 同社は、NSW州の約3,500戸の酪農家を組合員とする大手の協同組合系企業で、
飲用乳を中心に、チーズ、ヨーグルトなどを製造販売しており、昨年度の総販売
額は11億豪ドル(約960億円)に達している。また、同社は、国内 3 大飲用乳メ
ーカーの一つでもあり、ライバルであるナショナルフーズ社(豪州資本、株式会
社)とパーマラット社(イタリア資本、同)を合せると、国内飲用乳全体の約85
%を占めている。


組合員の間には株式上場に拒否反応も

 同社の幹部によると、各メーカーは、各州の飲用乳流通販売規制の緩和(NSW州
では 7 月 1 日から実施)を背景に、国内飲用乳市場をめぐる競争を大幅に激化
させている。

 同社は、7月も、クイーンズランド州を基盤とする中堅乳業メーカー(ポール
社)の買収をめぐり、ライバルのパーマラット社と激烈な争いを展開し、最終的
に敗れて撤退した経緯がある。また、同社は、NSW州で圧倒的な飲用乳供給シェア
を誇っているものの、その他の州でのシェアは低く(ビクトリア州では約7%)、
今後、ライバル2社に対抗してシェアを維持、拡大するためには、相当の事業資
金が必要になると見られている。しかし、同社の幹部は、組合員が経営の主導権
を維持するためには、少なくとも株式の75%を保持しなければならないとしてお
り、今回の株式上場計画も、全体の25%に限定している。

 なお、同社が今回の計画を実行に移すには、最低でも全組合員の75%の賛同を
得なければならない。これについて同社幹部は、本年末までに組合員の賛否を問
う投票を行うとして計画への自信を示しているが、組合員の間には部外者に主導
権を握られることへの拒否反応も強く、予断を許さない状況となっている。


飲用乳規制の完全撤廃により、競争はさらに激化する見込み

 こうした中で、先日、NSW州の酪農協同組合は、傘下の組合員に対し、生産者乳
価まで含めた飲用乳規制の完全撤廃が2000年までに実施されるとの見解を示した。

 こうした生産者側の動向は、飲用乳市場をめぐる乳業メーカー間の生き残り競
争を、ますます刺激する方向に作用するものと見られている。


元のページに戻る