国産表示規制を強化(豪州)


二段階の表示基準を設定

 豪州政府は8月13日より、新たに国産表示に関して二つの基準を設定し、表示
に当たっての条件を強化した。今回の主な改正点は、商品の内容構成に従い「Made 
in Australia」と「Product of Australia」とする二段階の表示基準を設けたこ
とにある。前者を表示する商品は、実質的な生産や加工が豪州で行われ、かつ豪
州国内産品の構成割合が生産や加工におけるコスト(一般管理費、流通経費や広
告費等を除く)全体の50%以上を占めること、また後者を表示する場合には、ほ
ぼ100%、豪州国内産品により構成されていることが条件となる。

 なお、今回の改正により、新たに罰則規定も設けられ、違反した場合は20万豪
ドル(約1,700万円: 1 豪ドル=87円)の罰金が科せられることになった。また、
豪州政府は、今後、新基準の周知徹底を目的に、120万豪ドル(約 1 億円)を費
やし、主に消費者を対象としたキャンペーンなどを実施するとしている。


農産物生産者等から強い要望

 これまでも、国産表示に関する法規制はあったものの、商品の内容構成に関す
る基準がなく、問題が生じた都度、司法による判定が下されていたことから、一
次品生産者や国産品を取扱う加工業者を中心に明確な基準を求める声が上がって
いた。

 農業分野からは、オレンジなど輸入濃縮果汁との競合にさらされている国内の
かんきつ類生産者や、輸入豚肉を最近の価格低迷の要因とする豚肉生産者からの
強い要望があったとされる。豪州の豚肉消費の約4割を占める精肉は国産で賄わ
れているものの、残り6割を占めるハムなどの加工品には、原料として輸入豚肉
も使用されており、昨年1年間で、カナダ産を中心に約 1 万 1 千トンの豚肉が
輸入されたことへの生産者の反発は強い。

 頭数シェアで3割近くを占め豪州最大の養豚州であるニューサウスウェールズ
州農業者協会は、最近行われた同協会の年次会議において、今回の規制強化に合
わせ、消費者の理解しやすい原産地表示の設定や、輸入豚肉と直接競合する加工
品の分野で国産の消費拡大を目指し、生産者課徴金を財源とした消費者対策を求
めていくことなどを決議している。時を同じくして、スーパーマーケット大手30
社は国産豚肉支援を発表している。A社は、豚肉製品について100%、国内産を販
売すると明言、またB社は9月までに、同社のデリカテッセン部門でも100%の国
産販売を目指し、やむを得ず輸入品を販売する場合は輸入品である旨、明示する
としている。


安易な「国産頼み」に戒めの声も

 最近になって、豚肉価格は実質過去最低とされる水準からは上昇傾向にあるも
のの、依然、採算割れの域を脱していないとされており、生産者サイドとしては、
クリスマスの需要期を控え、例年、豚肉輸入が増加する前に、輸入品との区分を
明確にし、国産の消費拡大に結び付けたいとの思いは強い。しかしながら、豚肉
業界内からは、長期的な消費拡大には、生産コストの削減とともに、消費者の望
む高品質な豚肉を創り出す努力こそが重要とし、安易な「国産頼み」に戒めの声
も上がっている。


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