恵みの雨が洪水を発生(豪州)


降水量増加で干ばつが解消

 豪州では、昨年来、本年 4 月頃まで、ビクトリア(VIC)州やニューサウスウ
ェールズ(NSW)州を中心に、長期にわたる大規模な干ばつに見舞われていた。こ
の干ばつは、エルニーニョの影響とされていたが、5月にはこの現象がほぼ終息
したため、その後は全般に降雨量が増加し、干ばつで劣化した牧草の品質改善や
冬穀物の生育向上に貢献していた。


NSW州の一部で集中豪雨による洪水被害が発生

 ところが、このエルニーニョの終息後、その対極とされるラニーニャ現象が発
生したため、7月後半以降は各地で予想を超えた天候不順となり、一部の地域で
は集中豪雨に見舞われて大規模な洪水が発生する事態となった。特に、7月後半
から断続的にNSW州北東部のタムワース周辺を襲った集中豪雨は、同地域に十数年
ぶりという大洪水を発生させ、その後9 月上旬現在でも同州の他の地域において
も新たな洪水が発生している。

 豪州東部を南北に走る分水嶺山脈の西側のダーリング川流域は、極めて平坦な
地形を特徴としているため、洪水地域からあふれ出た大量の濁水はゆっくりとし
た速度で西方に移動しており、それに伴って浸水被害地域も漸次拡大している。
同地域は、NSW州でも有数の穀倉地帯であると同時に肉牛・羊生産も盛んな地域で
あるため、これらへの影響が懸念されているが、耕地の冠水面積が20万ヘクター
ルにも及んだとされているのに対し、牛・羊などの家畜群は安全な高地に移動さ
せる時間的な余裕があったと言われている。しかし、周辺道路を寸断されて孤立
した家畜群に対しては、州政府がヘリコプターによる補助乾草飼料の投下などを
行って畜産農家を支援している。


洪水被害に対し、NSW州政府が緊急災害対策プランを発表

 こうした中で、事態を重視したNSW州政府は、アメリー土地・水資源相を現地に
派遣して被災状況を調査させる一方、この度、緊急災害対策プランを発表した。

 このプランの骨子は、@被災農家に災害救済基金から低金利(年4%)の復興
資金融資を行う、 Aタムワース地域に肉牛専門のアドバイザーを派遣する 、B
被災地域の自治体に復興作業促進の資金援助を行う、CNSW州土地・水資源省がイ
ンターネットを通じて各地の被災・復興に関する情報を随時提供する、の 40点と
されている。低金利融資の限度額は1 農家当たり8万豪ドル(約700万円:1豪
ドル=約87円)、返済期限10年で 7月以降の借入資金に適用されるとのことであ
る。

 なお、今回の天候不順がNSW州全体の農業生産に及ぼす影響については、穀
物は干ばつ解消による増産が洪水による減産を補うと見られている一方、畜産で
は、牧草状態の改善に伴う出荷保留や洪水の影響で牛の出荷頭数が減少したため、
価格が強含みの展開となっている。


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