大水害の秋収穫への影響を懸念(中国)


新中国建国以来、最大の水害

 中国の揚子江中・下流域と東北地方を中心とした地域が記録的な水害に見舞わ
れている。特に揚子江流域では1954年以来、44年ぶりの大水害と言われており、
6月中旬以降に降り続いた豪雨は広大な被災地域で3千人以上の人命を奪い、20
億4千万人が被災するなど甚大な被害を与えたばかりでなく、中国の農耕地域に
深刻な影響を与えている。全人代常務委員会によれば、8月22日の段階で全国29
省が被災し、影響を受けた農地面積は2,120万ヘクタールと全農地面積の22%にも
および、平年作より30%以上の減収が見込まれる被災農地は1,306万ヘクタールに
上ったとされる。

 これからさらに調査が進めば、被災規模がさらに拡大することも懸念されてい
る。


避けられぬ秋収穫食糧への影響

 先般、夏収穫食糧の収量は前年比11%減の1億1,310万トンと公表されたが、実
際にはこの公表値がさらに下方修正されるのではないか、と指摘する向きもある。

 今後注目される米、トウモロコシなどの秋収穫食糧は通年食糧生産の7割を占
め、その中でもトウモロコシの占める比率が大きい。今回の水害が秋収穫に及ぼ
す影響については未だ不明な点が多いものの、被害面積や地域を考慮すると影響
は避けられないとの見方が一般的となっている。特に、被害が拡大している黒龍
江省は松花江と嫩江が流れ、全国のトウモロコシの11%を生産する一大産地とな
っており、作柄や収穫への影響が懸念されるところとなっている。また、米は総
食糧生産の4割近くを占めるが、主要な米の生産省はほとんど揚子江流域に分布
しているため、米への影響も見逃せない。

 こうした状況を受けて、政府関係者の間では、今年通年の食糧生産量は史上2
位の 4 億9,250万トンを記録した昨年に比べ減産になることが確実視されている。


トウモロコシの需給面では一部に楽観論も

 現時点では農作物の被害状況が明らかにされていないため、秋作収穫後の穀物
需給の予測を行うことは困難である。しかし、トウモロコシに限ってみれば、河
南省の鄭州食糧卸売市場では、今年の作付面積が50万ヘクタール余り増加してい
ること、中国南部をはじめとした畜産地域におけるトウモロコシ需要が、水害に
よる養豚など畜産経営への打撃によって細ることが予測されること、また、トウ
モロコシの輸出市場である東南アジア地域が通貨危機以来輸入を減らしているこ
となどから、水害によるトウモロコシの減産が国内の同穀物需給に与える影響は
小さいとしている。


8 %経済成長達成は困難か

 一方、全人代常務委員会によると、8月26日までの経済被害は昨年のGDPの2.2
%に当たる1,666億元(約 2 兆 9 千億円: 1 元=約17.3円)に上ったとされる。
今後さらに被害額が拡大する可能性もあり、今回の水害が経済活動全般に及ぼす
影響は計り知れない。中国は幾多の諸問題を抱えつつ、年初に掲げた8%経済成
長を達成すべく努力を重ねてきたが、今回の被害の大きさから、首脳部の中には
目標達成は不可能との見解も出始めている。

中国地図


 近年の豊作が順調な経済発展の基盤となってきただけに、秋収穫の動向が大い
に注目される。


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