鶏卵価格が急上昇、生産増に期待(タイ)


卸売価格、過去 3 年間で最高水準に

 タイでは、 4 月中旬に1.4バーツ/個(5.0円:1バーツ=約3.6円)であった
政府の定める鶏卵の農家販売価格が、5月に1.9バーツ/個(6.8円)になり、6
月中旬からは2.3バーツ/個(8.3円)に上昇している。このため、バンコクの市
場における卸売価格も、 1 月に1.62バーツ/個(5.8円)と前年同月を上回って
以来上昇を続けており、6月の平均値(速報値)は前年同月比37%高の2.19バー
ツ/個(7.9円)になるなど、過去 30年間で最高値となっている。このことによ
り、同国の南部地域では、国境を越えてマレーシアから、より安価な鶏卵が1週
間に100万個近く違法に輸入されているという情報などもあり、鶏卵流通に混乱を
来している。


消費増大、飼養羽数の減少が価格上昇要因

 同国では昨年の通貨バーツの下落により、本年6月の消費者物価指数が前年比
10.7%増となっている。また、畜産農家においては、輸入飼料の価格が上昇した
ことなどから生産コストが上昇しており、経営が行き詰まり廃業する農家が多く
出る状況となっている。一方、畜産物の消費は、これまでの急速な経済成長を背
景に増加してきたものの、経済の停滞による給与所得の減少などにより減退する
状況となっている。
 
 今回の鶏卵価格の上昇要因について、政府は、豚肉、鶏肉の消費が停滞する中、
比較的安価な鶏卵に消費が集まっていることに加え、生産コストの上昇や鶏肉価
格の上昇により、農家が採卵鶏を早期に処理するなど、飼養羽数が減少したこと
を挙げている。さらに、 4 月から 5 月にかけて高温が続いたことによる産卵率
の低下、採卵鶏の死亡率の増加などにより、生産量が30%以上低下したためと見
ている。


今後の生産増による価格低下に期待

 こうしたことから、タイ商務省は消費者対策として、主要な量販店での鶏卵小
売価格を2.3バーツ/個(8.3円)以下にするよう業者に要請したり、鶏卵生産者
協会や輸出業者などと協力して、政府が農家から鶏卵を 3 バーツ/個(10.8円)
で買い上げた後、2.3バーツ/個で消費者に売り渡す措置を設けるなど、鶏卵価格
と流通の安定に努めている。

 同国では、7月からの降雨などにより比較的涼しくなってきたため、鶏卵の生
産量が増加しつつある。このため、今後は、既に最大サイズの鶏卵価格が下落し
始めていることもあり、現在の価格より徐々に低下するものと期待されている。


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